内閣改造の目玉・小泉環境相に真正面から疑問をぶつけた文春・新潮

◆勝手に原田発言謝罪

 安倍内閣改造の目玉の一つが小泉進次郎氏の環境相起用だろう。常にメディアの注目を集め、発信力もある若手のホープで、将来の首相候補との呼び声も高い。

 ところが初っ端からやらかしてしまった。就任早々、福島第1原発の処理水をめぐる前大臣の発言を「申し訳ない」と“勝手に”謝罪したのだ。

 原田義昭前環境相は退任の記者会見で、たまっていくばかりの処理水を「希釈して海洋に放出するしかない」と発言、同問題に一石を投じた。原田氏は「所管ではなく個人的意見」と断っていたものの、これは実際に現在取り得る「最も合理的な方法」と言われ、誰かが言わなければならなかったことだ。

 処理水には除去し切れない放射性物質トリチウムが含まれているが、これを海洋に流すことは世界中どこでもやっていることである。人体に害が及ばず、環境に特別問題も起こさない。だから世界中の原発でやっているのだ。

 ところが、韓国が国際原子力機関(IAEA)年次総会で、「世界の海洋環境に影響を及ぼす重大な国際問題」と日本を非難した。その韓国はかつて月城原発から福島第1の6倍もの濃度のトリチウムが含まれる“汚染水”を日本海にたれ流していたことがあり、「どの口がそれを言うか」と冷笑されただけで、取り合ってもらえなかった。

◆言葉に“軽さ”と指摘

 小泉氏の発言に早速噛(か)み付いたのが週刊文春(9月26日号)だ。批判された形の原田氏に聞いている。「まず信頼関係を築くために前大臣の発言について謝罪するのをおかしいとは言いません」と“大人の対応”を見せながら、「ただ、小泉くんに助言をするなら『寄り添うだけでは被災地の人々は救えないぞ』と言いたい」と苦言も呈した。

 内閣改造の目玉にまず一発パンチを食らわすのはいかにも文春らしい。脇の甘い大臣をやり込めるのではなく、エース級のカードを「その場に相応しい役柄を演じる反射神経は“天才子役”ならでは」と皮肉を効かせ、「その言葉には“軽さ”が目立つ」と真っすぐ面を打っていったのは小気味いいくらいだ。

 原田氏は、「被災地の皆さんの感情は尊重すべきです。健康に害がないとはいえ、心理的なダメージや風評被害を無視してはならない。だからこそ私は、国が責任をもって、漁業者を中心に経済的な補償をしなければならないとも主張している」と同誌に語る。

 これこそが「政治」というものだろう。同氏は「私なりにリスクを背負って発言したこと」とも述べている。こうした覚悟なしに、「関係者の方々がこれ以上傷つくことのない議論」(小泉氏)だけしていては前に進めない。

 それに小泉氏はこれまでも福島に通い、地元の人々と信頼関係を築いてきたはずではなかったか。それがいまだに腫れ物に触るような対話しかできない、というのだろうか。彼なりの進め方もあろうが、「パフォーマンスに終始する」のではなく、「決断」するのも政治家の役割だ、との原田氏の助言をどう聞いたかだ。

◆直接対決逃避と批判

 小泉新大臣を週刊新潮(9月26日号)も取り上げている。就任後の記者会見で小泉氏は原発を「どうやったらなくせるか」だと述べた。しかし、「それ(原発ゼロ)に向けた現実的対策を持ち合わせているのかは全く不明」(全国紙政治部デスク)だという。

 処理水問題にしても、海洋放出が合理的方法と認められていることを知っていながら、前大臣の発言を謝罪したのか、と同誌は疑問を呈する。

 さらに「他にもその真意を質(ただ)したいことがある」として、「なぜ今回『安倍内閣』に入閣したのか」と、これまた真正面からの疑問をぶつけている。同誌は昨年秋の自民党総裁選で「安倍総理の政権運営を念頭に、『率直におかしい』などと評して、石破茂元地方創生相に投票した」が、「その石破氏を『置き去り』に入閣した道理は果たして奈辺にあるのだろうか」とも問うている。

 「世間受けする発信は得意でも、都合の悪い直接対決からは逃げる傾向が見られる小泉氏」とまでいう同誌の舌鋒はあまりにも鋭い。

 読者、国民が抱いているもやもやした疑問をクリアにぶつけた両誌の記事だ。次はぜひ小泉氏の答えを聞きたい。

(岩崎 哲)