G20労働相会合、高齢者雇用のモデル示したい


 松山市で開かれた20カ国・地域(G20)労働雇用相会合は、高齢者の雇用促進を盛り込んだ閣僚宣言を採択して閉幕した。

 日本における高齢化は、世界でも例を見ないスピードで進んでいる。高齢者の雇用に関し、日本がモデルケースを示すことが求められよう。

 初めて主要テーマに

 G20の労働雇用相会合で、高齢化が主要テーマとなるのは初めてのことだ。閣僚宣言は、日本など主要国で高齢化が進んでいることを踏まえて「使用者に対し、高齢労働者の雇用維持、スキルの再習得、年齢による差別のない採用を奨励する」と明記した。

 日本では高齢化の進展に伴い、労働力人口に占める高齢者の割合が上昇し続けている。2017年版高齢社会白書によると、16年の労働力人口6673万人のうち、65~69歳は450万人、70歳以上は336万人だった。65歳以上の割合は11・8%を占め、前年の11・3%よりも増えている。

 また、現在仕事をしている高齢者の約4割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答している。「70歳くらいまで」やそれ以上との回答と合計すれば、約8割が高い就業意欲を持っていることがうかがえる。早期引退願望が強い欧州の人々とは対照的である。

 日本老年学会などは17年、現代人は心身が若返っているとして、65歳以上とされる高齢者の定義を75歳以上に引き上げるべきだとする提言を発表。現代人は10~20年前と比較し、加齢に伴う衰えが5~10年遅いと指摘した。こうしたことも、高齢者の就業を後押ししていると言えよう。

 もちろん、高齢者の体力や健康状態は個人差が大きく、こうした点への目配りは必要だ。ただ高齢化が急速に進む中、知識や経験が豊富で元気な高齢者に社会の支え手になってもらうことは、社会保障の持続可能性の高まりや地域経済の活性化にもつながる。

 問題は、高齢者が働きやすい環境をいかにつくり出すかだ。企業からは、希望する全ての高齢者を再雇用すると、人件費の負担が重くなる上、若手の働くポストが奪われかねないとの不安も出ている。

 政府は65歳までの雇用確保では既に、定年の廃止や延長、継続雇用のいずれかを企業に義務付けている。さらに70歳までの雇用に向け、来年の通常国会に高年齢者雇用安定法の改正案を提出して成立を目指す方針だ。

 70歳までに関しては、自社による雇用に加え、他社への再就職やフリーランス契約への資金提供などを、企業に対して努力義務として実施を求めるとしている。雇用の推進に向け、企業への助成金も充実させる必要があろう。テレワークの促進も、高齢者の就業人口を増やすための方策の一つだと言える。

 課題克服への道筋を

 高齢化は将来的には世界的な課題となる。現在は総人口における高齢者の割合が低いアフリカでも、20年後には高齢者数が2倍になると予想されている。日本は高齢者を社会で活用することで、課題克服への道筋を提示していきたい。