アフリカ会議開幕、持続可能な経済成長に貢献を


 わが国が世界に先駆けて主導してきたアフリカ諸国の問題解決と発展のための国際会議、第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が横浜で始まった。平均年齢が若く経済成長率も先進諸国より高いアフリカには潜在力があり、ビジネス・パートナーとして各国と日本との関係が深まることを期待したい。

安倍首相が開会式で演説

 「アフリカの開発の将来」を全体会合のテーマとした開会式の演説で安倍晋三首相は、3年間にアフリカへの民間投資が200億㌦に達したことを報告するとともに、これまでの投資の勢いが「新たに塗り替えられるよう日本政府は全力を尽くす」と各国首脳を前に約束した。

 政府開発援助(ODA)、国際協力機構(JICA)によって援助されるアフリカから、民間投資が拡大する互恵的な新しい関係を日本とアフリカが築いていく決意を表明したものだ。ただ、植民地時代後も独立紛争や内戦を経てきたアフリカでは、テロリズム、紛争、難民、感染症、人種問題など依然として困難な現実がある。持続可能な開発目標(SDGs)の数値にも表れており、多くの問題が横たわっている。外需依存の資源開発に頼ってはSDGsは実現できない。

 そのために、首相が網羅的な取り組みを示したのは評価できる。健康、医療、理数系教育、小学校での日本式教育、技術革新、紛争予防など全てを必要としているのがアフリカだ。大切なことは、投資や協力が人々の生活向上につながらなければならないことだ。

 大前提となるのは、社会の安定化、政治の健全さである。首相はわが国がアフリカ連合(AU)などと連携を取りながら、紛争の予防や仲介を行い、各国の司法、立法、行政が後退しないように努力する取り組みを提唱した。治安悪化が懸念される北アフリカ・サヘル地域で、わが国も国連平和維持活動(PKO)などの役割を担うべきだ。

 わが国は、冷戦が終結して間もない1993年に東京でアフリカ開発会議を始めた。当時の日本は世界第2の経済大国であり、ODAや国連への分担金でも大きな額を投入しており、アフリカに対して世界最大の援助をしていた。

 しかし、著しい発展を遂げた中国が、今世紀に入るとアフリカでの資源調達に大規模な資金・労働者を投入している。また、ロシアもソ連時代のアフリカへの影響力を基にてこ入れしようとアフリカサミットを今年10月に予定している。

 ただ、世界のアフリカへの関心が高まるにつれ、中露と欧米・日本との競争に政治問題が絡むようになってきた。民主主義の価値観と相反する開発独裁を庇護(ひご)するのでは本末転倒だ。南米ベネズエラでは、野党弾圧など深刻な人権問題を起こしているマドゥロ政権を、油田開発や軍事支援で深い関係にある中露が支持し、正常な選挙を求める欧米と対立が生じている。

質の高い投資と協力を

 わが国は、欧米諸国と協調を取りながら、SDGsを可能にする質の高い投資と協力内容でアフリカ各国から評価されるようにしたい。