低投票率の参院選の自民の得票数減を大げさに報じる朝日の負け惜しみ

◆得票率では現状維持

 先の参院選は与党が勝って安倍晋三政権が支持されたが、どうやら朝日は認めたくないらしい。投開票があった翌日の22日夕刊を見て、いささか呆(あき)れた。1面トップで「自民、勝ったけど 比例2000万票割れ、大幅減」と、「大幅減」を強調していたからだ。安倍政権は勝ったが、支持を減らしているぞ、と言いたいらしい。要するにケチをつけたいのだろう。

 記事は「自民党は今回の参院選比例区で、前回2016年と同じ19議席を獲得したにもかかわらず、得票数は2011万票から大きく下げ、1800万票前後にとどまりそうだ」「棄権者も含めた全有権者に占める割合を示す比例区の絶対得票率も、第2次安倍政権下での国政選挙で過去最低の17%を切る可能性もある」と書く。

 夕刊の最終締め切りはお昼過ぎだから、まだ票が確定していなかったのだろう。それで「とどまりそうだ」とか「可能性もある」と、推測でモノを言う。選挙結果を票数や率で論じるなら、票が確定してから、きちんと書くべきだ。それをせずに1面トップで大急ぎに「勝ったけど大幅減」とした。これは反安倍の成果が挙がったとの印象操作としか思えない。いかにも朝日的な角度のつけ方だ。

 だいたい今回の参院選の投票率は戦後2番目に低い48・8%だ。前回16年の投票率は54・7%だったから約6%減、ざっくり見て投票数は600万票減った。自民党は2011万票から240万票減らして1771万票。つまり投票率が下がった分だけ減らしたにすぎない。

 実際、得票率では35・9%から35・4%の0・5%減。ほぼ現状維持だ。どう見ても「大幅減」と騒ぐ話ではない。ましてや全有権者に占める絶対得票率が下がるのは当たり前で、低投票率の選挙に絶対得票率を持ち出すのは負け惜しみだ。

◆野党の方こそ大幅減

 これに対して同じ22日の時事通信は「(自民党は)13年参院選以来、衆参両院選の比例で30%台の得票率を維持。2番手の政党に常に10ポイント以上の差をつけ、1強ぶりを示している」と、安倍勝利をきっちりと記す。

 朝日は野党の減りっぷりには触れなかったが、時事は「結党直後の17年衆院選で19・9%を得た立憲民主党は今回、15・8%に下落した」と論じていた。筆者が調べたところ、旧民主党系の立憲民主党と国民民主党の票・率はこう推移している。

▽ 立 憲 民 主
   17年   1108万票   19・9%
   19年    791万票   15・8%

▽ 国 民 民 主 (17年は希望)
   17年    968万票   17・4%
   19年    348万票    7・0%

 ちなみに2000年以降、民主党は01年参院選(小泉ブーム選挙)を除いて2000万票台、得票率30%台を維持し続け、ピーク時(09年、政権奪取)には2984万票42・4%という驚異的な支持を得た。下野した12年総選挙では最盛期の3分の1以下の962万票16%に沈んだ。

 それが民進党に改名して幾分か盛り返し、17年選挙では旧民主党系(立憲・希望)は総計2076万票37・3%で、自民党を凌駕(りょうが)した。希望が右ウイングを広げ、一部保守票を食ったと評された。

 それが今回、立憲は317万票減、国民民主は620万票減の計937万票減だ。票の減らしかたは実に自民党の4倍にも達する。時事が言うように得票率でも22・8%で、自民党に10%以上引き離されている。こちらの方がはるかにニュースだと筆者には思える。

◆まるで共産党応援団

 野党共闘を唱える共産党だけが17年選挙より票・率とも若干増やした。朝日23日付社説は「野党共闘 結果を次につなげよ」とはっぱを掛けるが、全国紙でこんなことを言ったのは朝日だけだ。何やら共産党の応援団である。

(増 記代司)