自民圧勝を予測する共同の参院選序盤情勢はアナウンス効果が狙いか
◆過去に突出した予測
参院選が始まるや否や、各紙が一斉に「序盤情勢」を報じた(6日付)。どこも似たり寄ったりで「参院選 自民が優位」(読売)「自公、改選過半数の勢い」(朝日)なのだそうだ。
議席数の焦点は、53(自公で参院過半数)、63(自公改選過半数)、67(自民単独過半数)、77(自公改選前議席)、85(改憲勢力3分の2)。このうち63は堅いが、67と77は微妙、「改憲 3分の2割れも」(毎日)で85は危うい。そんな情勢のようだ。
そんな中、目を引いたのは共同通信の序盤情勢だ。自公は改選前の77議席前後まで積み上げる勢いで、「改憲勢力」(自公維)は国会発議に必要な3分の2以上の議席維持をうかがうとしている(沖縄タイムス6日付)。
改選数50の比例代表については「自民党は前回2016年の19議席を上回る勢いだ。現行制度になった01年以降で最多となる21議席を視野に入れる」。ちなみに朝日の予測では18(上限20~下限16)、毎日は18~20だから、自民にとっては実に景気のいい話である。
共同の予測と言えば、14年の総選挙が思い出される。当時、各紙はそろって「与党 3分の2超す勢い」と予測し、結果もそうなったのだが、そのときの共同通信の情勢分析が突出していた。
自民単独の予想獲得議席を3分の2(当時、317議席)を上回る320議席という衝撃的な数字をはじき出し、配信を受ける地方紙がこれを大きく報じた(同年12月4日付)。実際の自民獲得議席は291で、共同が予測した下限からも大きく下回った。今回も同じパターンになりはしないか。そんな疑問が湧く。
◆選挙行動への影響も
予測報道では「アナウンス効果」が問題視される。アナウンス効果とは、予測報道を受け有権者の投票行動が変化することを言う。「寄らば大樹型」(勝ち馬に乗る)と「判官びいき型」(劣勢側を助ける)があり、いずれも選挙結果を左右する。それで海外では選挙期間中の事前予測報道を禁止する国もある。
過去20年を見ると、1998年参院選は「自民大勝」の予測が、共産が大躍進し自民惨敗。2000年衆院選は「自民安定多数」が過半数割れ。03年衆院選でも「自民、単独過半数」が過半数割れ。小泉純一郎首相の「郵政解散」の05年衆院選は「自民、単独過半数」が、それどころか300議席超え。07年参院選では「与党、過半数困難に」が、困難を通り越して大敗し、第1次安倍内閣が終わった。
各紙はその後、調査を綿密にし、有権者も“誤報”を学習し、大勢は外れにくくなった。それでも「圧勝」とされると、緩みが生じるのは人情で、大なり小なり投票行動に影響を与えてきた。共同は左翼論調で知られるだけに14年のそれは与党の油断を誘うアナウンス効果を狙ったとしか思えなかった。
今回もその匂いがする。比例代表の予測差はせいぜい2、3議席で大勢に影響はない。カギは地方の1人区だ(計32議席)。自民が圧勝した13年(今回の改選組)は29勝2敗(岩手・沖縄で敗北=当時31)、16年は20勝11敗。ここで勝敗が決まる。今回、改憲派が3分の2を超えるには13年並みの勝利が必要だ。
◆産経は乗せられた?
そのためには16年選挙で敗北した東北などで勝たねばならない。だが、共同の分析記事を見ると、いずれの選挙区も競り合っており、自民勝利の構図は見えていない。それにもかかわらず、圧勝を予測する。これってフェイクニュース(偽装記事)の類ではないか。アナウンス効果を学習している有権者はさて、どう判断するか。
いずれにしても疑問符が付く共同の序盤情勢だ。それをこともあろうに産経6日付が1面トップで「与党の改選過半数確実 改憲勢力維持か」と報じている。産経には「産経・FNN世論調査」という自前があったはずだが、共同に乗せられてしまったか。
(増 記代司)





