短観2期連続の景況感悪化にもデフレ化の危機感が薄い読売、日経

◆3紙しか関心示さず

 安倍晋三首相側近の一人である、自民党の萩生田光一幹事長代行が4月に、その結果次第では10月の消費税増税見送りの可能性もと言及(その後「個人的見解」と釈明)した“注目”の6月日銀短観が1日に発表された。

 結果はやはり、懸念すべき内容となった。企業の景況感を示す業況判断指数が、大企業製造業で前期より5ポイント低い7となり、前回調査(7ポイント低下)に続き大幅な悪化を示した。

 ただ、各紙論説はあまり関心がないのか、短観結果に社説で論評したのは読売、日経、本紙の3紙のみ。4日の参院選公示を前に景気問題は国民の関心も高く、もっと取り上げていいはずなのだが…。

 さて、3紙の見出しを挙げると、2日付読売「米中摩擦と円高に警戒怠るな」、3日付日経「特需の先の成長が問われる」、本紙「増税でのデフレ化が心配だ」――。

 日経の「特需の先の…」は、製造業の景況感の悪化が続いた半面、非製造業は底堅さを示し、「景気情勢をめぐり、明暗の材料が交錯している」と指摘。予断を許さぬ米中通商摩擦の展開に「戦後最長」とされる日本の景気回復局面の持続には内需の足腰の強さが試される、とした。

 現在の置かれている日本経済が深刻なのか、そうでないのか、何ともスッキリしない論評である。

 全体的には、底堅さを示す非製造業も4~5月の10連休による特需などを反映したもので、「10月に消費増税を控えた耐久消費財の駆け込み需要の押し上げ効果は割り引く必要がある」とし、また「競技施設やホテルの新増設など五輪特需は山を越え、非製造業でも建設業の景況感は7ポイント悪化した」などと慎重なトーンが続く。そして、大企業の2019年度設備投資計画も前年度比7・4%増と、過去平均と比べれば強めだが、「18年度のような勢いは欠く」という具合である。

 結論的には、最終段落の「省力化やIT(情報技術)投資は景気変動にかかわらず大切だ」ということで、経営者が「特需」の先を見据えた企業体質の強化に取り組むことが日本経済の安定成長の条件だと述べるのだが、何とも教科書的で切迫感に乏しかった。

 この点、読売は見出しでも「警戒」と記しているように、先行きに警戒感を示してはいるが、結論は「政府・日本銀行は世界経済の動向を注視しつつ、内需主導の力強い成長を目指すべきだ」といつもと変わらぬ内容である。

◆お題目の賃上げ要望

 特に消費税増税については希望、願望の出過ぎ感が強い。増税による経済への悪影響を軽減するため、「内需の下支えに万全を期さねばならない」と指摘しつつも、「消費増税で、社会保障制度が安定化すれば、国民の将来不安が和らぐ効果が期待できる。長い目で見た場合、消費にプラスとなるはずだ。円滑に乗り切りたい」という具合である。

 もちろん、政府が2兆円超の対策を決めているため、根拠がないわけではないが、これまでの増税からは「想定以上の景況悪化」を経験してきた。しかも、米中摩擦や中国をはじめ世界経済の減速化という環境の悪さである。

 読売はまた、いつものように、消費の活性化へ賃金の底上げも欠かせないと指摘するが、環境の悪さから今年の賃上げは前年に及ばなかった。20年も世界経済の状況や増税もあり賃上げ環境はさらに厳しさが予想される。この点でも、同紙の要望表明のお題目に化している感がなきにしもあらずである。

◆消費増税の影響懸念

 本紙は見出しの通り、増税により「力強さのない経済がデフレ化しないか心配」とし、特に「景気が腰折れし、…過去最高となった税収の、所得税・法人税の増加要因が消えかねないこと」を懸念した。

 参院選に突入して1週間。与党は増税実施を掲げ、野党はその凍結・中止を訴えている。どんな結果になり、日本経済はその後、どういう展開をたどるのか。心配は尽きない。

(床井明男)