日米首脳会談、日本は同盟での役割拡大を


 安倍晋三首相は大阪市内でトランプ米大統領と会談した。トランプ氏は訪日前、日米安全保障体制の片務性に不満を示す発言をしたが、見直しについては議題に上らなかった。

 ただ、トランプ氏の発言が日米同盟の課題を浮き彫りにしたことは確かだ。日本は日米同盟における役割を一層拡大することが求められる。

トランプ氏が不満表明

 トランプ氏は米メディアのインタビューに「日本が攻撃されれば米国は彼らを守るために戦うが、米国が支援を必要とするとき、彼らにできるのは(米国への)攻撃をテレビで見ることだけだ」と述べ、安保条約上の負担が偏っていると指摘した。

 海洋進出を強める中国や、核・ミサイル開発を継続している北朝鮮の脅威が高まる中、トランプ氏が日米同盟の在り方を批判したことは、日本に大きな波紋を投げ掛けたと言えよう。

 この発言については、日本に在日米軍駐留経費の負担増や貿易協定交渉での譲歩を迫る布石だとする見方もある。異例の3カ月連続となる首脳会談では、安保条約見直しに関する議論はなく、両首脳は「揺るぎない同盟の一層の強化」で一致した。

 一方、通商問題でトランプ氏は対日赤字に言及。首相が日本企業の対米投資や雇用創出の状況を説明し、「早期の成果」に向けて貿易協定交渉を加速させる方針を確認した。

 トランプ氏が交渉に向け、日本に揺さぶりを掛けている面は確かにあろう。ただ、日米同盟に関する重要な課題を突き付けていることも事実だ。

 日米安保体制は、日本が米軍に基地を提供し、その見返りに米国が日本防衛の義務を負うものだ。これによって、地域の平和と安定に寄与する公共財の役割を担ってきた。

 だが安保条約の片務性は、日米の国力に天地の差があった時代の遺物だと言える。世界3位の経済大国である日本が、自国の防衛を米国に大きく依存することは望ましくない。

 安倍政権は2015年、集団的自衛権の行使を一部容認する安保関連法を成立させた。これに基づき、海上自衛隊最大のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」が17年、米艦防護を実施するなど日米同盟における日本の役割拡大に努めてきた。

 さらに、迎撃ミサイルシステムの導入や南西諸島の防衛体制強化を進めてきた。自主防衛力の一層の増強も求められる。

 日米同盟は米国の世界戦略にとっても重要だ。ホワイトハウスの発表によれば、首脳会談では同盟の深化・拡大の一環として「日米の技術面の優位性」を維持し、「機密情報や技術を共有するための保護システム」を強化することを確認した。これはハイテク分野でも台頭する中国に日米が共同で対処することを目指したものだ。

相互防衛へ論議進めよ

 日米関係の深化・発展の究極の形は、安保条約を日本も米国防衛の義務を負う相互防衛条約に格上げすることだ。このためには、集団的自衛権を全面的に容認する必要がある。

 首相はこのことを念頭に、防衛政策や憲法改正についての論議を進めるべきだ。