自民党、党一丸で草の根改憲運動興せ


 自民党は党大会で、統一地方選と参院選の勝利や憲法改正への誓いを新たにした。政治決戦に勝利しなければ改憲の道も開けない。これは一政党の課題でなく、日本の未来を左右する国民的課題だ。党一丸となって新たな御代を切り拓く。その意気込みが問われている。

参院選は「厳しい戦い」

 今夏の参院選は安倍晋三首相(党総裁)が演説で述べているように「厳しい戦いになる」のは間違いない。与党で過半数のハードルは高くないが、自民党が単独過半数を獲得するには66議席が必要で、これは容易でないからだ。

 2016年の参院選は57議席で、同程度であれば過半数割れする。13年選挙は自民党が政権奪取した直後で65議席と圧勝した。同じような機運を起こさねば、単独過半数に届かない。自民党が単独過半数を割り込めば、改憲勢力が参院で発議に必要な3分の2を占めることが困難になるばかりか、改憲に消極的な公明党の発言権が増す。これでは改憲機運は尻つぼみに終わってしまう。

 自民党にとって参院選勝利のカギを握っているのは地方の1人区だ。13年選挙は29勝2敗(当時31議席)だったが、16年選挙は21勝11敗で大幅後退した。これに対して都市部の複数区や比例の議席変動はあまりなかった。

 ここに党組織が脆弱(ぜいじゃく)な自民党の課題が浮かび上がる。かつての中選挙区時代の名残で、党支部は衆院議員の個人後援会の色彩が濃く、党員も後援会員という意識が根強い。地方区選出の参院議員はその神輿(みこし)に乗っており、選挙を戦うには必ずしも盤石と言えない。

 それで野党が候補者を一本化したり、自民党に逆風が吹いたりすると、それを跳ね返す力量を欠き敗北する。今年と同様に統一地方選に続いて行われた12年前の亥年参院選での「惨敗」がそうだ。安倍首相は「私の責任だ。片時たりとも忘れたことがない」と述べているが、議員後援会から近代的政党への転換という当時の党組織の課題は残されたままだ。

 これは改憲にもネックとなる。議員には「党の公認さえあれば、当選する」と安易に考える風潮があり、党の理念・政策の啓蒙(けいもう)や地域基盤を造ることに熱心な議員は一部に限られる。連立を組む公明党の支援を期待して改憲など対立しがちな政策に口を閉ざす傾向もある。これでは党一丸となって改憲に取り組むには心もとない。

 安倍首相は党大会で「いよいよ立党以来の悲願である憲法改正に取り組む時が来た」と、9条に自衛隊を明記する改憲への強い意欲を示し、運動方針で「新しい時代に即した憲法の改正に向けて筋道をつける覚悟」をうたった。これを末端組織に徹底し、草の根の改憲運動をどこまで浸透させられるか。その成否が参院選のみならず改憲の行方を左右する。

選挙は組織強化の機会

 統一地方選と参院選は党組織を強化し、草の根の改憲運動を巻き起こす絶好の機会だ。これを逃せば、立党の際に掲げた改憲の道が開けない。そう心得て亥年決戦に臨むべきだ。