商業捕鯨再開、持続的な資源利用の範示せ


 政府は国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、来年7月に約30年ぶりに商業捕鯨を再開すると発表した。当面は日本の領海と排他的経済水域(EEZ)に限られるが、将来の海域拡大も視野に入れている。

IWCでは見通し立たず

 1948年に「捕鯨産業の秩序ある発展」を目的に設立されたIWCだが、反捕鯨国の増加によって実質的には反捕鯨機関となっているのが現状だ。82年以来続く商業捕鯨の一時停止(モラトリアム)の見直しを求める日本政府提案も否決され、IWCに残っての再開の見通しはないとしての決定だ。米英豪など反捕鯨国との外交関係への影響を懸念する声もあるが、クジラ資源の保護と持続的な利用の範を示していくべきだ。

 クジラ資源についてはミンククジラやニタリクジラなど、十分な資源量が確認されているものもある。商業捕鯨の対象となるのは、こうしたクジラに限られる。捕獲頭数についても、IWCで採択された算出方式に沿って設定する。南極海で行ってきた調査捕鯨は、南極条約の制約があるため、打ち切りとなるが、目視による調査は続ける。

 日本はクジラ資源の持続的利用のため、長年にわたって資源を調査し、科学的根拠をもって捕鯨再開の道を模索してきた。しかし反捕鯨国は、動物保護の立場から捕鯨自体を悪と決め付ける独善的姿勢を強めている。

 日本には古くから捕鯨文化がある。かつて米国などが油を採ることを目的に盛んにクジラを捕獲していた時、それ以外の多くの部位は海に捨てられた。それに比べ、日本が育んだクジラ文化は、肉をはじめクジラを余すところなく利用するものだ。資源の有効利用という面でも世界に誇るべきものだ。

 商業捕鯨の再開は、こうした日本のクジラ文化を守るという意味がある。捕鯨基地のある北海道釧路市や和歌山県太地町などの地域活性化も期待したい。

 IWC加盟国のアイスランドやノルウェーのほか、非加盟国のカナダやインドネシアも商業捕鯨を行っている。日本はオブザーバーとして今後もIWCに参加し日本近海での調査データを提供するなど、科学的知見に基づく鯨類の資源管理に貢献していく考えだ。

 水産庁は「領海とEEZは第一歩。資源量や操業状況を見ながら見直すこともある」とし、将来はEEZ外の公海にも拡大する可能性に言及した。資源状況をしっかりと把握して進めてほしい。

 国際社会の理解を得られない状況での再開は残念だが、今後も対話と説得を続けていくべきである。そこで重要なのは、日本がクジラ資源の科学的な把握をベースに、保護と持続的利用を両立させる道を歩んでいることはもちろん、日本が古来育んできたクジラ文化が、貴重な水産資源を大切に有効利用するものであることを堂々とアピールすることである。

妨害への警備体制強化を

 商業捕鯨再開によって、今後シー・シェパードなど過激な反捕鯨団体の妨害活動が強まる恐れがある。政府は十分に警戒し、捕鯨基地のある港などで警備体制を強化する必要がある。