パイロット飲酒、ルール厳格化で防止せよ
旅客機のパイロットが飲酒の影響で乗務できず、遅延が発生するなどした問題で、国土交通省は日本航空に飲酒対策の再構築などを求める事業改善命令を出した。
日航副操縦士に禁錮10月
日航の副操縦士だった男性は10月、英国の空港で、乗務前に基準値を大幅に超えるアルコールが検出されたとして地元警察に拘束された。裁判所が禁錮10月の実刑判決を言い渡し、日航は男性を懲戒解雇処分とした。
男性は拘束前日にビールなどを大量に飲んでいたが、乗務前の検査を不正にすり抜けたとされている。同僚の機長らも相互確認を怠っていた。
日航では今月にも、乗務中の女性客室乗務員(CA)から基準値を超えるアルコールが検出された。このCAは昨年11月にも乗務中に飲酒した疑いがあると指摘されていた。
このほか、男性CAが今年5月、乗務の休憩時間中に缶ビールを飲んだことも明らかになっている。日航社員の間にアルコールへの認識の甘さが蔓延(まんえん)しているのではないか。
日航だけの問題ではない。国交省は全日本空輸とグループ会社のANAウイングス、スカイマーク、日航グループの日本エアコミューターの各社も厳重注意し、再発防止策の報告などを求めた。
ANAウイングスの機長だった男性は10月、沖縄県石垣市内でビールやハイボールなどを飲み、体調不良で翌日の乗務ができなくなった。全日空グループでは、乗務12時間前以降の飲酒を禁じていたが、男性はそのルールに抵触しており、全日空は諭旨退職処分とした。
スカイマークや日本エアコミューターでも11月、男性機長からアルコールが検出され、乗務交代のため旅客便に遅れが生じた。いずれのケースでも、機長は前日に飲酒していたという。多くの乗客の命を預かるパイロットとしての自覚が足りないと言わざるを得ない。
パイロットの飲酒問題で新たなルールを検討していた国交省は、乗務前の精密なアルコール検知器による飲酒検査に加え、乗務後の検査も義務化する方針だ。乗務前検査の不正なすり抜けや乗務中の飲酒を防止する目的がある。
また、呼気1㍑当たり0・09㍉㌘未満などとするアルコール基準を新設し、少しでも検知された場合は乗務禁止にする。安全運航のため、ルールの厳格化は当然だろう。
日航も先月、英国の事件を受け、これまで譴責から出勤停止の範囲だった飲酒への処分を、今後は懲戒解雇も視野に行うとの対策を示した。また、パイロットがアルコール検査で基準値を超え、旅客便に遅延が発生した場合、乗客に対して「(パイロットの)体調不良」と説明していたのを、アルコールに起因することを明らかにするよう改めるとしている。
心身の健康管理徹底を
パイロットは不規則な乗務などによるストレスを紛らわすため、アルコールに依存するケースもある。
各航空会社はパイロットやCAらの心身の健康管理を徹底する必要がある。