海洋プラごみ対策、意識高め官民で加速させよう
政府は、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた会合を開き、海洋プラスチックごみ対策として廃棄物処理施設の整備支援などを柱とした2019年の行動計画を策定した。世界的に大きな問題となっている海洋プラスチックごみへの対応で日本が指導力を発揮するためにも、国内での対策を加速させる必要がある。
有毒な化学物質を吸着
わが国では海洋プラスチックごみについて、流れ着くペットボトルや漁具などが早くから問題とされてきたが、国際社会で早急な対策が叫ばれるようになったのは「マイクロプラスチック」の害が明らかとなってきたためである。
海に流れ込んだプラスチックごみが、紫外線や波で砕かれ5㍉以下になったマイクロプラスチックは有害な化学物質を吸着し、さらに魚が誤嚥(ごえん)して体内が汚染される恐れがある。海に残存するプラスチックごみは、50年までに海の魚の重量を上回るとの予想もある。
経済協力開発機構(OECD)によると、15年の世界のプラスチックごみ発生量は3億㌧超。国別では中国が4000万㌧と最多だが、1人当たりでは米国に次いで日本が2番目に多い。
今年6月にカナダのシャルルボワで開かれた先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)では、プラスチックごみ削減のための「海洋プラスチック憲章」が提起された。憲章には「30年までにプラスチック包装の最低55%をリサイクルし、40年までに100%回収する」といった目標が盛り込まれている。
日本は国民生活や経済への影響などに対する懸念から署名を見送ったが、その後方針を転換。憲章の数値目標をカバーする「プラスチック資源循環戦略」を来年6月に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)までに策定することになっている。
プラスチックごみの削減では世界の企業が積極的な取り組みを始めている。今年7月に米コーヒーチェーンの大手スターバックスが20年までに全世界でプラスチック製のストローを廃止すると発表。米ハンバーガーチェーンのマクドナルドも紙製ストローの導入を発表した。
今年10月には、米清涼飲料大手コカ・コーラなど世界的な企業を含む約250社・団体が、インドネシア・バリ島で開かれた海洋保全の国際会議で、プラスチックごみの削減を目指す共同宣言に署名した。署名企業は世界全体のプラスチック包装排出の20%を占めるという。
このように世界的な削減へのうねりが起きる中、日本は四方を海に囲まれた島国で魚食大国であるにもかかわらず、海洋プラスチックごみへの意識はまだまだ低いと言わざるを得ない。デニーズなどのファミリーレストランチェーンでは海外のプラスチックごみ削減に追随する動きが出ている。こうした企業が増えることを望みたい。
法律でレジ袋を有料に
便利さを売り物にする日本では、スーパーなどの過剰包装が問題になる。過剰包装を減らし、レジ袋の有料化も企業任せではなく、法律を定めて統一的に実施すべきである。