新防衛大綱 「専守」では戦争を抑止できぬ


 政府が今後10年の国防の基本指針となる新たな「防衛計画の大綱」と2019~23年度の装備品調達などを示す「中期防衛力整備計画」を決定した。宇宙・サイバーでの戦いに積極的に対応する方針を打ち出したことなど評価すべき点もある。

 だが、依然として自民党と旧社会党などが対立した「55年体制」下の政策を引きずっているようだ。これでは今後10年間に直面することが予想される事態に対応し難いと言える。

中露朝の脅威高まる

 今後、日本で生じると考えられる安全保障上の問題は、第2次大戦後、直面したことのない状況である。中国の国力・軍事力が巨大化した半面、米国の力が相対的に低下しただけではない。ロシアは旧ソ連当時と同じように覇権主義的な動きを隠そうとしない。

 一方、北朝鮮の非核化は一夜の幻想と化しつつある。従って、従来のような対米依存は期待できなくなることが想定されるからだ。

 大綱策定は5年ぶりで、安倍政権では2回目となる。宇宙・サイバー・電磁波といった新領域での防衛力強化が「死活的に重要」と指摘し、従来の陸海空に新領域を加えた全ての防衛力を向上させて一体運用する「多次元統合防衛力」の構築を打ち出した。

 ただ依然として「専守防衛」を国防の基本としているようで、敵基地攻撃能力の保有は見送られている。兵器破壊力や戦闘速度の増大のため、現代戦で必要なことは戦いを事前に抑止することである。攻撃能力なき軍事力は、現実の侵攻を阻止できないのみならず、戦争勃発を抑止する能力もないことを自覚すべきである。

 海上自衛隊最大の「いずも」型護衛艦を改造し、空母化することは、遅きに失したとはいえ、評価できる。懐が細い日本のような島国の防衛は、前進防衛体制が不可欠であるからだ。

 対日武力攻撃は、領土に到達する前に阻止することが必要である。ただ、自民、公明両党の事前の申し合わせによって、艦載機(米最新鋭ステルス戦闘機F35B)は常時搭載しないことを確認しているのは極めて愚かである。

 第一に、危機管理上、拙劣であると言わねばならない。避けるべきは、危機が非常に高まった際に臨戦態勢を急激に強化することだとされる。帝政ロシアの動員開始が引き金となり、各国もこれに対応して半ば自動的に戦いに突入した第1次大戦時のようになりかねないからだ。

 また、艦載機の操縦技術を維持するには、絶えず離着艦訓練を繰り返しておくことが不可欠である。そうすれば事故率が非常に低下することになる。

空母保有否定は論理矛盾

 空母保有を「憲法違反」と非難する見方もあるようだ。国際法上容認されている「自衛権」は「緊要性」と「比例性」の原則を守ることが条件である。

 一方、自衛権を明記した国連憲章51条に空母保有を禁止する文言はない。日本周辺国が空母を保有している点を念頭に置けば、憲法上、自衛権を容認しておきながら、空母保有を否定するのは論理矛盾である。