入管法改正へ、友好途上国の人材開発支援を
外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案が成立する。受け入れ環境の整備に課題を残すが、対象は我が国と良好な関係にある開発途上国の労働者に絞り、相手国の人材開発を通じて経済支援を行うとともに我が国の生産性向上をもたらすことが望ましい。
「労働力輸出」進める国も
同法改正で、熟練労働者となって「特定技能2号」の資格を取得すれば在留期間がなくなることになった。事実上の移民政策の導入になるとみられる。
人口減少による労働現場の人手不足は大きな課題だが、外国人も出身国を離れて働くのは人生をかけた決断だ。職場だけでなく社会生活を含めたさまざまな配慮が必要である。
注意したいのは、時の経済事情だけで外国人労働者を受け入れては、将来の禍根となりかねないことだ。景気はいい時も悪い時もある。欧米では失業した移民労働者の不満が噴出し、騒乱すら起きている状況を教訓にすべきだ。特に、日本との間の歴史に争いの火種のある地域から多くの人を受け入れるのは難題を抱えることでもある。
同法改正により政府は来年4月から即戦力となる外国人労働者を受け入れる。その際、我が国に理解があり外交的にも協力・協調できる開発途上国からが望ましい。反日リスクは排除すべきで、安倍政権が米国と共に打ち出す「自由で開かれたインド太平洋」構想に照らせば、東南アジア、インド、ネパール、スリランカ、アフリカ諸国、ブラジルなどを想定すべきだ。
これら途上国の中には「労働力の輸出」を重要政策に据えている国もある。例えば、フィリピンでは200万人近い労働者が国外で働いており、国内総生産(GDP)の9%近くを稼いでいる。先月末から今月初めにかけてネパールを訪問したフィリピンのロブレド副大統領は現地紙に、ネパールと同じく中東諸国で多くの自国民が労働していることから、派遣先の国に労働環境の改善を求めるなど協力する意向を示している。
今後、我が国と途上国との外交では外国人労働者の処遇も主要なテーマとなるだろう。
一方、懸念すべきは中国の動きだ。米国のペンス副大統領のハドソン研究所における演説が示す通り、政府や民間企業、研究機関、大学など米社会のあらゆる現場に中国人が進出し、長期間にわたって大量の情報を入手して軍事転用し、政治的影響力も与えるなど、中国共産党を頂点に国家の安全保障と一体の民間活動が行われている。
米議会では超党派の年次報告書で中国の数々の違法行為に触れており、抜き差しならぬ問題になっている。中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)製品の米政府機関での使用禁止、カナダでの同社副会長逮捕など非常に警戒されている。
中国人受け入れは慎重に
我が国の自民・公明の与党はこのところ中国との友好を強調し、経済界も歓迎しているが、欧米やインド、オーストラリア、ニュージーランドなどが中国を危惧している現実に刮目(かつもく)する必要がある。中国人労働者を単純な労働者と見てはならず、受け入れに慎重であるべきだ。