憲法審査会、野党は改憲論議の席に着け
あす開幕する臨時国会の焦点の一つが、安倍晋三首相が意欲を示す憲法改正の論議だ。自民党は衆参両院の憲法審査会に9条への自衛隊明記や緊急事態条項創設など「改憲4項目」を提示し、論議を進めたい考えだ。
自民は4項目説明の考え
だが、一部野党は審査会の開催すら拒もうとしている。先の通常国会では会期が182日間あったにもかかわらず、憲法審査会が開かれたのは衆院3回、参院2回にとどまった。野党が審査会の開催を拒んだからで、目に余る改憲阻止戦術だった。
これでは改憲論議はいつまで経(た)っても前に進まない。審議拒否は開かれた論議を前提とする国会への背信行為だ。立憲主義の否定にも等しい。臨時国会では党利党略に走らず、国の未来を論じる審査会に真摯(しんし)に臨んでもらいたい。
安倍首相は先の党役員人事で憲法改正推進本部の体制を一新させた。新たに本部長に就任した下村博文元文部科学相は、臨時国会で衆参の憲法審議会を頻繁に開催するよう他党に呼び掛けるとしている。当然のことだ。
まずは改憲の手続きを定めた国民投票法改正案の成立を期すべきだ。改正案は自民党、公明党、日本維新の会、希望の党が先の通常国会に共同提出したもので、駅やショッピングセンターに投票所を設置するなど投票環境の改善を目指す。
これに対して護憲派野党は改憲案への意見表明のテレビCMの規制を求め、その受け入れを迫って審査会の開催を拒んできた。だが、テレビCMは投票の14日前から禁じられている。異論があれば審査会の場で意見を戦わせるべきであって、審査会の開催拒否は筋違いだ。
改正案成立後に、自民党は改憲4項目を審査会で説明したい考えだ。これは①自衛隊の明記②緊急事態条項創設③参院の合区解消④教育の充実――で、いずれも党派に捉われずに論議すべきテーマと言ってよい。
自衛隊については国際安全保障環境の変化から、その役割がおのずと高まっている。大規模災害への救援復興活動も増え、防衛予算は5兆円を超す。それにもかかわらず、自衛隊違憲論が未(いま)だ根強い。これでは自衛隊員は胸を張って任務を遂行できない。その一方で9条2項を残したままでは防衛に齟齬(そご)を来すとの指摘もある。
緊急事態条項では自民案は緊急事態を大地震などの大規模災害に絞り、国会が機能しない場合に政府が政令で対応し、国会議員の任期延長などを目指すとしている。これには国防を含めないことへの批判がある。
また、合区解消は参院議員を各都道府県から最低1人選出する仕組みを作るものだが、従来の論議では「ねじれ国会」など二院制の位置付けが問われてきた。論議の棚上げに異論もある。
臨時国会を初めの一歩に
教育については環境整備を国の努力義務とするが、努力義務であれば改憲が必要なのか。さまざまな論議があってしかるべきだ。もとより各党で異論やスタンスの違いがあるが、議論を重ね合意点を見いだすのが審査会の目的だ。
臨時国会を改憲論議の初めの一歩にすべきだ。