首相、総裁3選有力


自民、国会議員票で6割以上固める

 岸田文雄政調会長が24日、自民党総裁選への不出馬と安倍首相支持を表明したことで、安倍首相の3選が有力となった。国会議員票では6割以上の票を首相が固めたことになる。また、首相は若者層に浸透、地方でも支持を広げている情勢だ。
(政治部・亀井玲那)

若者層、地方にも浸透

 岸田氏は24日の会見で「出馬することはせず、安倍総理を中心にさまざまな政治課題に取り組み、貢献していく」と述べ、派として首相を支持する姿勢を明らかにした。既に首相支持を表明しているのは、首相の出身派閥で最大勢力の細田派(94人)、第2派閥の麻生派(59人)、第5派閥の二階派(44人)で、派閥に所属しない議員のうち菅義偉官房長官に近い議員ら数十人も首相支持に回る可能性が高い。岸田派(48人)を加えれば党所属国会議員票405票のうち6割以上を首相が集めることがほぼ確実で、国会議員票は首相優位の見通しである。

安倍首相

安倍首相

 一方、石破茂元幹事長は14日に著書を発表し事実上の出馬表明をしたが、正式な表明時期は模索中だ。首相が西日本豪雨などの影響で出馬時期を遅らせたことで、本格的な選挙戦は展開しにくい。国会議員のうち石破支持は、今のところ自身が率いる石破派(20人、石破氏含む)にとどまっている。石破氏は自民党を離党し自由党代表の小沢一郎氏と行動を共にした経緯があり、ベテラン議員の中には不信感を持つ者もいる。石原派(12人)の最高顧問を務める元副総裁の山崎拓氏を講師に招き勉強会を開いたり、竹下派(55人)に強い影響力を持つ元参院議員会長の青木幹雄氏と接触するなど「関係修復」に努めるが、苦戦を強いられているのが現状だ。

 だが、石破氏は2012年の前回総裁選で、党員票で首相を圧倒した。今回も党員票での巻き返しを図って地方行脚に力を入れている。

 総裁選での党員票の扱いは今回から変更される。党員票の総数は国会議員票と同数の405票に拡大。また決選投票が行われた際には、各都道府県ごとに1票を割り振って党員票が反映される。石破氏は地方創生相を務めた経験から、地方の重要性をその地ならではのエピソードを絡めつつ語る。また、遅くまで地元の議員や支持者らと酒を酌み交わすなどの交流にも積極的で、今回も地方で健闘するとの見方が強い。

石破茂氏

石破茂氏

 一方、首相は石破氏に比べると地方に出向く機会は圧倒的に少ない。会合に参加してもすぐに東京へ戻ることがほとんどで、地方の支持者には「安倍さんは地方への愛情がない」と嘆く声もある。

 またアベノミクスの効果が、地方や一般レベルではまだ実感されていない点も大きい。石破氏はこの点を指摘しつつ、経済政策の面でも地方創生の重要性を訴える。

 これに対して、首相も官邸で地方議員らとの面会などを積極的に行っている。24日には野田聖子総務相のお膝元である岐阜県連の県議らと面会。県連会長代行の猫田孝氏は首相支持の意向を表明した。また、西日本豪雨の被災地に入り政府として全面的な支援を約束することなどもしており、それ自体が最大の選挙対策になっている。25日には西日本豪雨で要望に訪れた岡山県連関係者とも面会し、「予算的にも(措置を)しっかりやる」と伝えた。

 自民党は党員の投票資格要件を緩和する方針で、党費を1年分しか納めていない党員にも投票権を認める。投票可能年齢も20歳以上から18歳以上に変更する予定だ。総裁選への関心を高める狙いがあるが、若者層に浸透しつつある首相には有利に働く見通しだ。

 野田氏は出馬を目指す姿勢を崩していないが、出馬を断念した前回同様20人の推薦人を集められるかが課題となる。