各編集部の「森友・書き換え」特集より読ませた文春の飯島氏コラム
◆テレビと同様の内容
財務省の“文書書き換え問題”は27日の佐川宣寿前国税庁長官の国会証人喚問で局面が動く可能性があるが、潮目が変わるのを見越してか、週刊誌の安倍政権への厳しい見方が目立ってきた。
週刊新潮(3月29日号)は特集「地獄の門が開いた『森友改ざん』の『アベゲート』」をトップで報じている。「ニクソン大統領が辞任した一大疑獄を彷彿とさせる」と米国での疑獄事件になぞらえた。一方、週刊文春(3月29日号)は「安倍首相夫妻の罪と罰」と題して8ページの特集を組み、もっぱら昭恵夫人の行状を取り上げている。
野党と一部偏向メディアが安倍たたきに狂奔するのは、安倍政権を倒すのが目的であり、憲法改正を阻止することが最終的狙いだ。そのためには手段を選ばず、事実に目をつぶり耳をふさいで、都合のいいことばかりを垂れ流している。連日、テレビを見ても、新聞を開いても、この問題ばかりで、国民の間には「森友疲れ」さえ出てきている状況だ。
こういう時こそ週刊誌は新聞テレビとは違う視点から、状況をスッキリと腑分(ふわ)けして、正しい情報を読者に伝えることが期待されるのだが、どうも最近は既存メディアとあまり違わない内容が多くて物足りない。
◆文春は昭恵氏に焦点
昭恵氏に焦点を当てたのは週刊文春だ。夫や政府が窮地に追い込まれているにもかかわらず「セレブライフ」を楽しみ、首相も「平静を装う」中、攻撃の矢面に立たされているのが麻生太郎財務相だ。「そもそも今回の森友問題は麻生氏からすれば、“安倍夫妻のとばっちり”に近い」と同誌は書く。「だいたい昭恵さんから始まったことだろ」との麻生氏のボヤきも付け加えたがこれに尽きるだろう。
昭恵夫人を取り上げたことで同誌の特集について「書き過ぎ」との批判も一部にはあるが、「安倍昭恵」という公務員でもなく議員でもない存在の「権力」行使と周囲の受け取り方が今回の事態を招いたのは事実だ。
昭恵氏の周りには“怪しい人脈”が近づいて来る。周囲はそれを懸念するのだが、「私には首相夫人という立場がある。何かやろうとする時は利用していいよ、と伝えています」と繰り返し語ってきたというのだ。とんだ勘違いである。同誌が指摘する「昭恵氏は自身が権力を持っていることにどこまでも無自覚だ」というところに問題の本質がある。野党の矛先がそこへ向かうのも仕方ない。
「地獄の門が開いた」とわざわざダンテの「神曲」の一節を持ち出した週刊新潮は「アベゲート」とこの事態を海外メディアが報じ出したと伝えている。佐川氏の喚問でその門が開くかどうか注目だ。
◆解散・総選挙を提言
各編集部が力を入れて特集を組んだが、それでも一つのコラムの方が読ませた。文春に連載コラムを書いている飯島勲氏の「安倍首相は解散に打って出よ!」だ。
佐川氏が「裏で答弁と文書の整合性が取れるよう、それこそ普段の調子で部下に厳格に命じて書き換えさせていたんだったら、参っちゃうな。財務相も首相官邸も全く関係ないってのが真実だぜ」と分析するが、それが真相に近いのだろう。
野党に対しては「森友問題の追及にのめり込みすぎだよ」として、「いたずらに国会を混乱させる」と批判するがまったくその通りだ。「重要法案も一向に成立させられないじゃん。経済・財政面だけじゃなく、閣僚が外遊できないなど外交にまで影響が及んできている」という批判は至極まともだ。
そして飯島氏らしいアイデアを示した。「解散」である。佐川氏の証人喚問を済ませ、財務省の膿を出し切り、2018年度予算と予算関連法案を成立させた後に、「即、国民に信を問う衆院解散・総選挙を決断すべきよ」と提言するのだ。
野党は「総辞職しろ」と迫っており、「内閣不信任を突きつけてるも同然なんだから、首相が信を問うのは当たり前」だという理屈で、野党も反論できまい。
しかし、昨年総選挙を行ったばかりだ。与党に勝ち目はあるのだろうか。「オレのインテリジェンスでは、いま解散なら与党は七議席の微減にとどまる。過半数維持は間違いないぜ」という。この1ページのコラムが放つ信号を誰がどのように受け取るのか、事態の推移に注目してみる。
(岩崎 哲)