各党代表質問、不安残す立憲の安保政策
衆院本会議で安倍晋三首相の所信表明演説に対する各党代表質問が始まり、立憲民主党の枝野幸男代表、自民党の岸田文雄政調会長、希望の党の玉木雄一郎代表が質問に立った。衆院選、第4次安倍内閣の発足を受けての新たな与野党の枠組みによる国会論戦だが、焦点は民進党が立憲民主党と希望の党に分裂した原因でもある憲法・安全保障をめぐる議論だった。
集団的自衛権行使に反対
野党第1党になった立憲民主党の枝野氏は、2015年の通常国会で制定された安保関連法について「いわゆる安保法制、集団的自衛権の行使は、立憲主義の観点から決して許されない」と述べた。これは、同党の立憲を冠する党名が、安保法制反対運動が標榜(ひょうぼう)した「立憲主義」から来ているためだ。
このためか、枝野氏は「安保法制を前提」として憲法に「自衛隊を明記すれば、地球の裏側まで行って戦争ができることになる」「専守防衛を大きく逸脱する」と訴えた。地球の裏側での戦争を政府は従来否定しており、不毛な水掛け論である。
安保法制を「違憲」と叫ぶのであれば「合憲」と認め得ると判断する憲法改正案の提示を排除しないのが、本来の立憲主義であろう。しかし、衆院選中も含めて同党にそのような訴えは全くない。
枝野氏は、同党が「専守防衛に徹する自衛隊や、個別的自衛権の行使について、合憲であるとの立場」だと強調することで憲法9条堅持の姿勢を示した。集団的自衛権の行使を禁じた古い政府憲法解釈の支持でもあり、国連憲章で独立国に認められている自衛権を制限する護憲イデオロギーを脱していない。
それにもかかわらず同氏は、現代を「古いイデオロギーの時代ではない」と主張して「右でも左でもなく、上からの権威主義的な政治に対して、草の根からの、国民の声に基づく民主主義を、もう一度立て直す」と述べた。これは、敗戦後に社会党などが展開した護憲運動を見せ掛けだけ改めて繰り返しているにすぎない。
北朝鮮は、同国のミサイルが具体的にわが国や米国を射程に収めているとして威嚇しており、緊密かつ強力な日米同盟で抑止力を向上させて対処する必要がある。この点、同党の政策は不安を残すと言える。
希望の党の玉木氏は、憲法改正を幅広く議論すると表明した一方、「『自衛隊を9条に明記する』だけの改憲提案には違和感を禁じ得ない」として「わが国が行使できる自衛権の範囲や行使の要件などの議論もせず、単に自衛隊を位置付けるとの議論は極めて不誠実」と訴えた。
確かに、自民党が発表した憲法改正草案は「自衛権の発動」に改正の重点があり、自衛権の規定こそが憲法・安保問題をめぐる論議の核心だ。その際、わが国の取り得る選択肢を狭めることは、むしろ平和に逆行することに留意すべきだ。
保守派の発言に期待
両野党代表の質問に、これまで民進党内に存在した政策の違いが顕著に示された。共産党との共闘で封印されていた保守派の発言が、国会に新風を吹き込むことを期待したい。