野党の「加計」追及不発を質問時間の減少と野党分裂のせいにする朝日
◆「疑惑」の証拠示せず
「加計騒動」はもはや終わったと言うべきだ。衆院文部科学委員会は15日に加計学園の獣医学部新設問題の質疑を行ったが、野党は「疑惑」の証拠を一つだに示せなかった。
朝日の報じ方を見れば、一目瞭然だ。従来の編集手法なら、野党の言い分を大きく掲げるところだが、15日付夕刊は、「政府『加計認可手続き正当』/野党『特区4条件に合わぬ』衆院文科委で応酬」と、双方の主張を並べるほかなかった。毎日に至っては1面下段に小さく報じただけだ。
夕刊報道のビックニュースは翌朝刊で詳報するのが常だが、朝日16日付は「加計特区認定 議論平行線」と夕刊同様に両論併記。それも1面肩で、トップは「認可外保育に補助金」の政府検討策に譲っている。毎日も3段見出しのサブ扱いだ。
それでも朝日は未練がましく、野党の追及不発を質問時間のせいにしている。国会の質問時間をめぐって与党が与野党同一時間を求めているのに対して、野党は「与党2野党8」を主張して対立し文科委での加計質疑は結局、「1対2」に落ち着いた。
これを朝日は「時間増の与党、野党を批判」(15日付夕刊)「与党、『加計は正当』演出 『当事者』自民・義家氏が質問 メディア・野党を批判」(16日付)と、質問時間が増えた与党に矛先を向け、野党については「時間配分減で野党苦戦 民進分裂も影響、追及細切れ」(16日付)と、追及不発の理由を時間減と野党分裂のせいにする。
◆“時間切れ”を演出
この分析には無理がある。時間減といっても野党には計160分の時間があったはずだ。そのうち民進系の立憲、希望、無所属の3会派には計100分あり、立憲の逢坂誠二氏は40分間質問に立ったが、「疑惑」を明らかにすることができなかった。
朝日によると、逢坂氏は改めて資料を読み込んで質問に備え、獣医学部新設が安倍内閣の設けた「4条件」を満たしていたのかを問おうとしたが、4条件の一つ目で時間切れになったとし、「(時間が)まったく足りない」と嘆いている。記事は質問内容にはあまり言及せず、“時間切れ”を演出している。
果たして時間だけの問題か。逢坂氏は改めて資料を読み込んで質問に備えたというが、これは裏返せば、新しい材料がなかった証拠だ。文科委の質問時間が足りないと言うなら、それこそ疑惑を朝日などの「野党応援団」を通じて明らかにすべきだが、それができない(これも疑惑がない証拠だ)。それで逢坂氏は質問の中身でなく、時間に問題をそらしてしまったのだろう。
産経によると、先の総選挙の期間中(10月11~22日付)に森友・加計問題を取り上げた各紙記事を比べると、朝日が1172行(新聞1ページ換算で2・2ページ分)の断トツの分量で、「社説やコラムでも何度も取り上げており、朝日の執念が感じ取れる」(10月26日付)。ちなみに毎日が483行(同1・2ページ分)と続き、産経、読売、日経が報じた量は1ページ分にも満たない。
◆壮大な時間の無駄に
選挙後も朝日は執拗(しつよう)に取り上げてきた。大学設置審が11月10日に獣医学部の設置を認める答申を出すと、11日付紙面は批判記事オンパレード。「特区認定、深まる疑問」「開学、疑問答えぬまま 教員数・実習、相次いだ是正意見」と、「疑問」を連発。社説では「『加計』開学へ これで落着とはならぬ」と畳み掛けた。
確かに設置審は審査過程で問題点を指摘し、是正意見を出したが、加計学園はそれを受けて修正済みだ。そもそも是正意見は他大学の認可でもよくあるもので、加計に限った話ではない。
また認可答申では8点の留意事項が付けられたが(毎 日 15 日付)、これは「『総合参加型臨床実習』は外来患畜数を確保するなど効果を高めるよう努める」といった課題を示したもので、これも他の答申では普通にある。
それを朝日や毎日は「疑問」「疑惑」と連呼し続けた。その総仕上げが衆院文教委の質疑だったはずだが、大山鳴動しても何一つ出てこなかった。それを質問時間のせいにするのはいかにも往生際が悪い。参院は12月に加計問題を質疑するが、壮大な時間の無駄になりそうだ。それでも時間が足りない?
(増 記代司)





