第4次安倍内閣、緊張感持続し国難に対処を
安倍晋三首相は特別国会で第98代首相に指名され、全閣僚を再任して第4次内閣を発足させた。衆院選を受けての今国会は、憲法改正に前向きな勢力が衆参で発議に必要な3分の2を超える状況下にあり、いよいよ改正条項を与野党でどう絞るかの新たな段階に踏み込んでいく。首相は「勝利の喜びはきょうの日をもって過去のこととする」と語ったが、緊張感を持続させつつ内外の国難解決に全力で取り組んでもらいたい。
政策に「魂」を入れよ
首相は記者会見でまず、経済成長につながる「生産性革命」と、幼児・高等教育無償化などの「人づくり革命」を断行する考えを強調した。それらが国難の一つである少子化対策に不可欠であると判断しているからだ。補正予算を組んで対策を具体化させる積極姿勢を評価したい。
ただ、少子化対策は、子育て支援策の充実や財源の手当てをすれば実現するものではない。自民党が伝統的に重視してきた家庭教育や家族の価値を社会に取り戻すための意識改革が必要である。首相には、政策に「魂」を入れその重要性を常に語るよう求めたい。
首相はまた、もう一つの国難と位置付けた北朝鮮の脅威に関して「圧力を最大限に高め、北朝鮮から対話したいと言ってくる状況にしなければならない」と語った。そこで注目されるのが、5日に来日するトランプ米大統領との首脳会談だ。同大統領は拉致被害者家族との会談も予定している。軍事的選択肢も持つ米大統領とより緊密な関係を築けるかが第4次政権が最初に問われる外交課題である。
首脳会談の他の重要テーマとなるのが、TPP(環太平洋連携協定)参加の問題だ。離脱を表明しているトランプ大統領に、撤回させるのが困難を伴うことは確かだ。しかし、参加が米国の利益となることを理解してもらう必要がある。先の中国共産党大会で、南シナ海への侵出を誇らしげに語った習近平国家主席が指導する中国を封じ込めるための経済連携であることを粘り強く訴えなければならない。
不可解なのは野党の姿勢だ。審議日程を十分に確保したいとの理由から特別国会の会期を8日から39日に延長させたが、何を議論する考えなのか。まさか、森友・加計問題の追及だけのために30日以上も延期を求めたわけではあるまい。当然、首相は質疑に対しては丁寧かつ謙虚に答える姿勢が求められる。
だが、それ以上に野党に必要なのは、政府・与党側の諸提案に対して自党の提案を出して議論を深めることだ。共同代表も決まっていない希望や民進、立憲民主にそれができるのか。
自民党が年内提出を予定している改憲案に対しても、各党は明確な案を出すべきだ。その上で、どの項目から発議して国民投票にかけるかの議論に憲法審査会は入らなければならない。
一心不乱に取り組め
「改革あるのみ」と首相が強調するように、第4次内閣には、19年3月末が有力となっている天皇陛下の退位に向けた環境整備などの重要な課題が山積している。「仕事人内閣」の閣僚は、一心不乱に取り組み成果を挙げてもらいたい。