憲法改正へ守勢から攻勢に

衆院選大勝 安倍政権への提言

平成国際大学教授 浅野和生

 東アジアの安全保障情勢が緊迫している。北朝鮮の核開発に加えて、強軍と強国で中華民族の夢実現を目指す習近平の中国を見れば、近い将来に緊張が緩和される可能性は小さい。一方、アメリカのグローバルな支配力は弱まりつつあるから、日本は一日も早く、自立した国防力を持つ国家にならなければならない。安倍政権には、そのための準備を粛々と進めてほしい。

浅野和生

 わが国の国防を担う自衛隊の強化、自衛隊が正常に機能できる環境、法的体制を整備する基礎となるのが憲法改正である。同盟関係の強化も、自立国防の推進も、自衛隊違憲論が国会で堂々と語られる状況では困難である。

 幸い、衆参で改憲派が3分の2を超えているから、国会における改憲の発議は可能性がある。問題は、それに続く国民投票である。

 過去の衆議院総選挙の結果から見ると、比例代表区で「自民党」と書いた有権者の数は、安倍内閣が成立した2012年に1662万人で、このところ4回の総選挙の中で最も少なく、反対に、自民党が政権を失って民主党内閣が成立した2009年は、1881万人で最も多かった。ちなみに今回は1856万人である。つまり、投票用紙に「自民党」と書いた人の数は、投票率が52%でも69%でも、自民党の勝ち負けにもかかわらず、極端な変動はない。一方、2009年の民主党は2984万票、2012年には977万票の得票であり、反自民票は、「風」次第で3倍以上も変動した。

 憲法改正の国民投票は、史上初の機会だから、改憲派も護憲派も盛り上がって「つむじ風」が吹くかもしれない。国民投票で憲法改正支持が過半数を得ることは容易なことではない。

 また、国民投票が安倍政権の存続を懸ける選挙と同時に行われると、野党各党は安倍降ろしを掲げるから、その傍らで改憲派諸党が憲法改正に賛成を訴えて、憲法改正成立というのが見通しにくくなる。だから史上初の憲法改正を懸けた国民投票は、国政選挙と切り離して単独実施にする方が良いのではないか。

 野党と結託して、一部マスコミが安倍降ろしと憲法改正封じ込めに走ることは、容易に想定できるから、良識派のマスコミは、政権に対する是々非々の報道に徹する必要がある。憲法改正に向けては、マスコミにも、明日の日本に責任を持つ覚悟が問われる。

 安倍首相には、改憲実現に向けて守勢から攻勢に転じるアジェンダセッティングのため、最低でも政権の顔を変え、安倍首相以外の改憲推進の顔を立てることが必要だが、タイミングを見て改憲派諸党との改憲大連立政権を呼び掛けるくらいの決意が欲しい。