少子化と地方創生こそ重要だ
エルドリッヂ研究所代表・政治学博士 ロバート・D・エルドリッヂ
今回の衆院選は、野党の混乱と再編の中で自公連立政権が「圧勝」したとのイメージで報道されているが、果たしてそうなのか。あれほど分裂した野党を相手に、もっと議席を取らなかったのが逆に不思議だ。
もちろん、自公は確実に過半数を超え、憲法改正の発議ができる定員の3分の2を辛うじて維持したので、明確な勝利だったと認めるべきだ。ただし、あまり選択肢のない選挙区もあったし、53・68%の投票率は戦後2番目に低かったので、強い支持を得たと言えない。与党は安心してはいけない。安倍総理は、「謙虚に」政権を運営すると言ったが、それより、緊張感を持ってもらいたい。
特に、多くの課題を「先送り」する傾向を強く感じる。外交でいえば、まず尖閣諸島問題だが、それと関係する中国への対応や、韓国、北朝鮮、ロシアとの問題。また、広報外交の弱さも待ったなしだ。
1950年代から自民党が取り組んでいるのに結論が出ない憲法改正。第1次安倍内閣の反省から慎重になっているのだろうが、これからの任期内(あるいは「人気内」)にやらなければ、今後、安倍総理ほど、それを実現できる強いリーダーシップ、固い信念、確実な国際性を持つ首相が果たして誕生するかは不明だ。
もちろん、本来、自公だけではなく、幅広く、与野党の間で、これからの日本の在り方を決める、21世紀に相応(ふさわ)しい新しい憲法(改正)が必要だ。今回の選挙で最も明確になったのは、憲法改正に反対する野党議員は僅かしか当選しなかったことだ。これほど明確なマンデート(権限)はない。
しかし、私が考える最も重要かつ緊急な課題は、少子化問題と地方創生だ。今、両方とも真剣に取り組まなければ、日本の将来はない。待てば待つほど、国の人口が減少し、日本の素晴らしい田舎が消えていく。
30年近く、主要都市以外の日本に住んできた外国人として感じたのは、政府は地方の重要性を認識していないということだ。政治家も然(しか)り。しかし、私から見れば、本当の意味の地方創生がなければ、つまり地方が元気でなければ、日本の再生はない。
いつも思うのだが、日本は一つの危機や一つの課題しか有効に対応できない。しかし、今の時代は、同時に数多くの課題に取り組まなければならない。いずれの課題もこれ以上先送りできないからだ。長期政権になった安倍政権に求められているのは単なる「安心」ではなく、「前進」だ。






