与党圧勝を無視した論調を張り憲法を歪めて安倍政権を批判する朝日

◆恨み節噴出の「希望」

 総選挙の「総括」が続いている。圧勝した与党から「謙虚」の言葉が聞かれたので、敗者は反省の弁かと思いきや、恨み節ばかりだ。希望の党のことである。

 初めて開かれた両院議員総会で小池百合子代表(都知事)への批判が噴出した。いわく、「辞任すべきだ」「第二自民党になるなら、今ここで解党してほしい」「安倍政権と対峙(たいじ)し、野党と連携すべきだ」「野党第1党の代表を首相指名した方がよい」―

 揚げ句の果てに希望の基本的な路線である、安全保障法制容認を柱とする「現実的な外交」路線も崩されつつある(毎日26日付)。安保法制に反対した民進党出身議員から「選挙のために節を曲げたと批判されている。安保法制は容認していないと確認してほしい」との意見が出て、結局、「民進党の考え方と矛盾しない」と確認されたという。

 あきれた話だ。これでは「第二立憲民主党」だ。改憲に前向きで安保法を容認する。それで希望の党に1票を投じた有権者にとっては、まるで振り込め詐欺だ。それなら今ここで解党してほしい。そんな声が聞こえてきそうだ。

 小池氏の「排除」発言だけが希望失速の原因なのか。毎日24日付「記者の目」で倉重篤郎氏(編集編成局)は、安全保障という基本政策で民進党が一貫して掲げてきた安保法制の廃案主張と、自民党内でもタカ派視される小池氏の安保政策がいずれ矛盾することは想像すれば分かっていたはずなのに、わらにもすがらんと小池ブランド傘下に入ったとして、こう言う。

 「安保政策における一種の集団転向的政治行為が選挙民のひんしゅくを買い、希望の党の失速要因になった。小池氏の排除の論理よりはこちらの影響の方が重い気がする」

 倉重氏は反安倍の強硬派記者だが、この点は同感だ。今になって選挙のために筋を曲げなかったことにするのは醜態だ。こういう人にはとても政権を託せない。

◆議論封じたのは野党

 朝日もぶざまである。与党圧勝がなかったかのような論調を張っている。投票翌日の社説は「多様な民意に目を向けよ」(23日付)。選挙は民意を集約するためのものだ。それを無視し、多様な民意に目を向ければ、船頭多くして船、山に登るだけの話だ。

 24日付1面「座標軸」では根本清樹・論説主幹が「『法の支配』立て直せるか」と、安倍政権下で法の支配がなかったかのように言う。ここでは特定秘密保護法、安保法制、「共謀罪」法を取り上げ、「(安倍政権は)合意づくりは面倒だし、議論は無駄だといわんばかり」だったとする。

 与党に言わせれば、話はあべこべだろう。野党は反対一辺倒で、議論を無駄だと言わんばかりに国会に「反対」のプラカードまで持ち込んだ。だから国民は民進党議員の豹変(ひょうへん)に驚いたのだ。

 25日付1面は「与党で議席3分の2、『多すぎる』51%」と、世論調査結果を報じる。だが、同日付の読売は「内閣支持上昇52% 衆院選結果『よかった』48%」とあり、「『よくなかった』36%を上回った」としている。

 朝日記事の最後部には「内閣支持率は42%(17、18日実施の前回調査は38%)、不支持率は39%(同40%)だった」とあるから朝日調査でも内閣支持率は上がっている。こっちは見出しに取らない。

◆言葉明瞭も意味不明

 大野博人・編集委員の「日曜に想う」(29日付)には驚愕した。「民意を担えぬ立法府の敗北」とするからだ。思わず、竹下登元総理の「言語明瞭・意味不明」が浮かんだ。選挙が終わったばかりなのに民意を担えぬ立法府とは、言葉は明瞭でも意味不明だ。

 大野氏は「与党が勝って野党が負けたという総括」はよくない、「行政府をチェックするべき立法府は、選挙前よりもずっと弱体化してしまった」ので勝ったのは行政府で負けたのは立法府だとする。

 これは詭弁(きべん)だ。わが国は議院内閣制だ。国会は「国権の最高機関」で、内閣総理大臣は国会議員から選ぶ。憲法前文は冒頭に「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」とする。だから衆院選は政権(行政府)選択選挙なのだ。

 どうやら朝日は憲法を歪(ゆが)めてまで安倍政権を批判したいらしい。こっちの方こそ「法の支配」を危うくする。

(増 記代司)