衆院選与党勝利、敗退した希望の存在意義で大局観示した読売と小紙

◆自ら墓穴掘った希望

 第48回衆院選(22日投開票)は自民党が追加公認3人を含め、284議席を確定する圧勝となった。大きな争点となった憲法改正は、連立を組む公明党と合わせた与党313議席に達し、改正の国会発議に必要な3分の2(310)を超える議席を維持したことで今後の進展が期待できる。

 今回の選挙は事前から、希望の党の発足と民進党の「自壊」による希望の党への駆け込みをめぐる野党間のドタバタ劇の中で立憲民主党の結党と目まぐるしく動いた。選挙戦の構図も形の上では、自公与党に対し、保守中道野党の希望の党と日本維新の会、希望の党入りを拒まれた民進党左派が立ち上げた立憲民主党と共産、社民の左派系野党の3極の争いとみられた。

 だが、事実上は「自民、希望両党の対決」(読売9日社説)のはずだった。それが希望の党は議員定数の過半数の候補者を擁立して政権選択の構えを取りながら、小池百合子代表が出馬せず。それが無理な事情は理解できても、代表に代わる首班指名の候補を明確にすべきなのにそれすらもせずでは通るものも通らない。与党の対応に透明性を迫りながら自らは不透明な対応では、信頼される責任政党としての在り方として批判を浴びるのも当然だ。「保・革」ではなく「保・保」による健全な二大政党制が日本に根付くことを望ましいと考える多くの国民が期待した希望の党だったが、急速な失速は自ら招いて墓穴を掘ったものと言えよう。

◆「北隠し」を見透かす

 結果、公示後の選挙の性格は「政権選択から安倍政治の信任に変ってきた」(読売11日社説)。小欄(15日)も「安倍政権5年の通信簿付け」としたのである。

 選挙の大争点の柱は北朝鮮・安全保障問題となり、核実験やミサイル発射を繰り返す北朝鮮の挑発に、万が一の事態も十分にあり得る国難を前に、国民の生命や生活を守る政治を安倍政権に託すのか否か。結果、国難への対応が問われている選挙でも、相変わらず根拠の糸口すら示せてない「モリ・カケ(森友・加計)疑惑」隠しを言い立てる左派や希望の主張を、逆に国民は「北朝鮮隠し」と見透かしたと言っていい。

 与党大勝の決着を産経は「(北朝鮮危機と少子高齢化の)差し迫った国難を乗り越える。安倍晋三首相の呼びかけに、国民は強い支持を与えた」(23日主張)、小紙は「衆院選で『国難突破』を掲げた安倍晋三政権が信任された」(23日社説)。読売は「野党の敵失に救われた面も大きい」としながらも、有権者が「今の野党に日本の舵(かじ)取りを任せることはできない。政策を遂行する総合力を有する安倍政権の継続が最も現実的な選択肢だ」(同)というのが民意だとしたのである。

 選挙結果を「野党の自滅」と評す日経は「有権者は自公の連立政権に軍配を上げたが、野党よりはややましという消極的な支持にすぎない」(同)とやや醒めた見方を示した。

◆野党の「負け」と未練

 公正中立の建前はとうに捨て<安倍政権つぶし>が社是とも噂される偏向ぶりが批判されている朝日はどうか。「有権者は安倍首相の続投を選んだ。/森友・加計問題への追及をかわす大義なき解散――。みずから仕掛けた『権力ゲーム』に首相は勝った」(同)と民意を一応は認める。その舌の根が乾かないうちに「民意も実は多様だ。選挙結果と、選挙戦さなかの世論調査に表れた民意には大きなズレがある」と続け「むしろ野党が『負けた』のが実態だろう」と説くのが未練がましい。

 世論調査を持ち出して社説タイトルが強調する「多様な民意に目を向けよ」からは、「多様な」という用語は実に便利な言葉だと感心させられる。選挙結果は厳然とした数字に基づくわけであるが、そこから生れる解釈、評価はさまざま、実に多様だからである。

 大勝の与党と敗北した希望。敗者について小紙は「国家の基盤となる安全保障・外交政策を与党と共有できる『健全野党』の芽が生じてきたことだ。これは『戦後政治』を転換させる可能性を秘めている」「希望の党は今選挙では振るわなかったが、健全野党として成長するか注目したい」と言及。読売も「(希望が)安全保障関連法を容認し、安保政策で自民党と差のない保守系野党を目指す姿勢は評価できる」と肯定的に論じた。この大局観は正論である。

(堀本和博)