二大政党制、問われる「改革保守」の中身

2017衆院選 国難と選択(中)

 解散前日の先月27日、小池百合子東京都知事が代表を務める希望の党が結党会見を開き、「寛容な改革保守」を掲げた新党が誕生した。この翌日には野党第1党であった民進党の「合流」劇が続き、一時は「自公対希望」の政権選択選挙になるとも思われた。

 それとともに1994年の小選挙区比例代表制導入以来の念願だった保守の二大政党制実現への期待も高まった。しかし、小池氏自身が衆院選に出馬せず、首班指名候補を示さなかったことなどが響き、希望への期待は急速にしぼんだ。

 小池氏が憲法改正や安保法制に賛成しない民進党出身者を「排除する」と発言したことに反発したメンバーたちが立憲民主党を結党し参戦したことも希望にとって誤算だった。これにより、「自民、公明」「希望、日本維新の会」「立憲民主、共産、社民」の3極による三つ巴(どもえ)へと選挙戦の構図も一変した。

 希望は、過半数の候補者を擁立したものの、報道各社の世論調査では「お膝元」の東京でも苦戦が伝えられている。

 この状況を招いたきっかけになったと指摘されるのが、小池氏の「排除する」発言だが、安保法制や改憲を基準に候補者を選別することで、現実的な外交・安保路線を明確にしたこと自体は、二大政党制実現に向けて、不可欠な一歩だった。

 保守とリベラルが混在する野党第1党の民進党が事実上分裂することで、改憲への姿勢や外交理念を与野党で共有し得る政党が誕生した意義は小さくはない。

 一方で、憲法9条改正に関して、希望のスタンスは定まっていない。公約では「9条を含め改憲論議を進める」としているが、「自衛隊の憲法への位置付けは、国民の理解が得られるかどうか見極めてから判断」などとあいまいだ。安倍晋三首相が提起した9条への自衛隊明記案について、小池氏は「大いに疑問がある」と距離を置いている。

 小池氏は、「安倍1強」政治の打破を有権者に呼び掛けるが、「しがらみのない政治」「既得権益打破」などのスローガンが先行して、少子高齢化などの国難とも言える課題克服への道筋が見えない。

 経済政策も急ごしらえの印象は拭えない。増税凍結の代替財源とされる約300兆円の大企業の内部留保への課税については、「法人税との二重課税になる」などと経済界の反発も強く、小池氏は「課税にこだわらない」などとトーンダウンさせた。

 7月の都議選では小池氏率いる都民ファーストが政権批判票を取り込み圧勝した。しかし、今回、政権選択の選挙であるにもかかわらず、首班指名候補を示さず、政策があいまいなままでは、幅広い有権者からの信頼を得られるだろうか。

 “小池人気”頼みの選挙戦に限界も見えてきた中、地道に中長期的なビジョンや具体的な政策を練ることやそのための組織体制づくりが必要だ。

 実際に政権に就いた時、この国をどう舵(かじ)取りするのか、「改革保守」の中身が問われる。

(政治部・山崎洋介)