都議選で「受け皿」になれなかった民共路線の「大」惨敗に沈黙する朝日
◆来る総選挙に関心
都議選から1週間、自民党の歴史的惨敗の余波はまだ続いている。都議選は地方選とはいえ、有権者は1000万人を超え、しばしば国政選挙の先行指標となってきた。それだけに来る総選挙にどんな影響を及ぼすのか、おのずから関心が高まる。
産経は、都議選の出口調査データを衆院東京全25選挙区に当てはめた各選挙区シミュレーションを行い、小池百合子都知事が率いる「都民ファースト」が国政に進出した場合、自民党は1勝24敗になると試算している(5日付)。
その国政進出について小池氏と行動を共にしてきた若狭勝衆院議員は、年内にも動きが出ると述べているから(9日、フジテレビで)、自民党のみならず、野党も浮足立ってこよう。
ここはぜひ、朝日の見解を聞きたいところだ。昨年来、政権交代の「受け皿」として民進党と共産党の「民共路線」を熱心に薦めてきたからだ。なにせ「ここを先途(せんど)とばかりに政権批判を畳み掛ける朝日」(本欄6日付)である。ならば、「受け皿」として今も民共路線を推奨するのか。
ところが、朝日は全くと言っていいほど民共路線に触れない。都議選後、計5本の政治モノ社説を掲げたが(10日現在)、そのどこを探しても民進党のミの字も、共産党のキの字も出てこない。「安倍1強」批判を言うなら当然、「受け皿」についても責任ある言論を張るべきだが、完全黙秘を決め込んでいる。
◆民共「反比例の法則」
朝日が言わないので、代わりに民共路線を総括しておこう。民進党は、前身の民主党が1997年に都議会で初議席を得た後、12↓22↓35↓54(政権奪取の09年)と倍々で議席増を果たし第1党になったが、政権転落後の13年は15議席に激減し、共産党にも負けて第4党に転落。今回は5議席、得票率も6・9%で、往時の見る影もない。
一方、共産党は90年代、理念なき連立や離合集散する新党への政治不信を背景に共産党ブームを起こし、97年の都議選では21・3%の高得票率で26議席を獲得、第2党に躍り出た。
だが、民主党支持が広がった2000年代に入ると共産党ブームは去り、01年の都議選では15・6%(11議席減の13議席)。05年は15・6%(13議席)、民主党躍進の09年は12・5%(8議席に激減)。逆に民主党ブームが去った13年はやや持ち直し13・6%、17議席へと回復。今回は民進党が惨敗した分、踏ん張って19議席へと増やした。得票率は微増の13・8%。
つまり、民進党(旧民主党)と共産党には「反比例の法則」が働いている。どちらかが勝てば、どちらかが沈む。両者そろって勝った試しがない。ここからも民共路線のナンセンスぶりがうかがえる。
マルクスの理論に「量から質への転化の法則」というのがあるが、いくら民進党と共産党が数を合わせても質(政権交代)へ転化しないことが改めて証明された。おまけに民共は計20・7%で、自民党の22・5%の後塵(こうじん)を拝している。量の変化もこの程度ではマルクスもお手上げだ。自民党が歴史的惨敗なら、民共路線は歴史的「大」惨敗だ。
◆反対党では万年野党
さすがに毎日はこの事態に黙っておられなくなったようだ。4日付に「民進党『受け皿』になれず 深刻さがわかっているか」との民進党叱責の社説を掲げた。
毎日によれば、都民ファーストという国会とは別の新たな選択肢ができた結果、有権者の間に根強かった安倍政権への批判や不満が一気に顕在化した。裏返せば、安倍政権以上に民進党に対する有権者の不信が消えないことが、これまで政権を助けてきたとしている。
では、民進党への不信とは何か。毎日はあまり切り込まず、「衆参の議員総会を開いて夜を徹してでも議論してはどうか」と、党内論議の不足を皮肉っている。だが、ここははっきり言うべきだ。旧社会党のような反対党では万年野党だ。政策棚上げの野合・民共路線は不信を助長するだけだ、と。
要するに不信の根底には容共(共産主義またはその政策を容認すること=広辞苑)姿勢がある。それが「深刻さ」の本質だ。そこを清算できないから、民進党も朝日も沈黙を続けるしかないのだろう。
(増 記代司)