都議選で自民大敗、ここを先途とばかりに政権批判畳み掛ける朝日

◆本音が覗く各紙社説

 「小池系が過半数 自民惨敗」(日経)

 自民党は過去最低だった38議席をさらに下回る23議席という歴史的惨敗。代わって小池百合子都知事率いる地域政党「都民ファーストの会」が49議席を獲得して都議会第1に躍り出るとともに、与党を形成する公明党(23議席)などと合わせ64議席の過半数を大きく超える79議席を確保したのが、この2日に行われた東京都議会議員選挙(定数127議席)の結果である。

 これを伝える翌3日付の新聞は、どこも冒頭の日経のように第1面トップは一様に「小池勢力過半数」確保と「自民惨敗(大敗)」の大見出しが躍っている。それが社説(主張)となると、各紙の視点の違いが浮き彫りになってきて、そこに本音が覗いているのが興味深い。社説タイトルは次の通りである。

 小紙<小池都政の真価が問われる/都議選圧勝>、産経<都政改革の期待に応えよ/小池勢力圧勝>、読売<「安倍一強」の慢心を反省せよ/小池支持勢力の責任は大きい>、日経<安倍自民は歴史的惨敗の意味を考えよ>、朝日<政権のおごりへの審判だ/都議選、自民大敗>、毎日<おごりの代償と自覚せよ/都議選で自民が歴史的惨敗>。

 自民党の都議選惨敗が、「安倍1強」状況から出た「おごり」と閣僚の失言など相次ぐ国政レベルの不始末で自滅したものという指摘は、各紙とも言及している。その上で「小池勢力圧勝」など小池勝利に焦点を当てた社説タイトルが示すように、小紙と産経は都議選の結果を踏まえてこれからの小池都政の課題を中心に論じた。

◆チェック機能に懸念

 国政選挙4連勝した昨年7月の参院選で、あれだけ「おごり」を戒めたのに、こうなった上では仕方ない。政権としては出直すしかないが、都政は都政と割り切った冷静な目でもっぱら今後の都政の具体的な課題について言及。

 「議会改革」を争点に小池知事は、「自民党主導の都議会が本来のチェック機能を果たしてこなかったと主張した。同じ課題は今後、小池与党にも突きつけられる」「都民は投票だけでよしとせず、知事と議会の在り方を見守る必要がある」(小紙)。「都議選では、都政をめぐる政策論争が十分とはいえなかった」。告示直前に「豊洲移転、築地再開発」の両立案を打ち出したが「財源の詳細な根拠や具体的な築地活用計画は小池氏も『都民』も語っていない。早急に今後の青写真を提示すべきだ」(産経)などと、築地市場の移転問題や東京五輪の開催準備などの取り組みの加速を求めたのである。

 これに対して読売と日経は、今後の都政への注文と安倍政権のおごり批判が半々の論及を展開した。

 「東京五輪への準備の加速」と「豊洲の新施設への移転もすみやかに実現」することを求めた日経は、自民党執行部にも「今回しめされた厳しい民意の意味を深く考える」ことを迫った。読売は小池氏について「情報公開による都政の透明化を掲げる姿勢も都民に評価された」ことに言及する一方で、市場移転問題では「二つの市場機能をどう併存させるのか、詳細については語っていない。具体的な計画や収支見通し」の早急な提示を求めた。また小池支持勢力についても「知事と一線を画し、都政をチェックする役割を果たさなければ、小池氏が批判してきた『古い議会』と同じになりかねない」との懸念を指摘したことも妥当で同意できる。

◆政権批判を全面展開

 一方、朝日と毎日はここを先途(せんど)とばかりに、都政の今後についての論及は片隅に置き、安倍政権批判を畳み掛けた。特に朝日は「安倍政権のおごりと慢心に『NО』を告げる、有権者の審判と見るほかない。/『安倍1強』のゆがみを示す出来事は枚挙にいとまがない」との主張の元で、閣僚らの失言や強気に進めた国会運営などを並べ立てた。都議選の結果は全て「安倍1強」のゆがみからと言わんばかりに、安倍政権批判を全面展開。その上で「野党の背後には多数の国民がいる。首相は、その民主主義の要諦(ようてい)を忘れてしまってはいないか」「その当たり前のことが理解できないなら、首相を続ける資格はない」と、まさに言いたい放題。

 だが、与党の背後にも、もっと多くの国民がいるのだが、朝日にはその当たり前のことについては念頭にはないようだ。

(堀本和博)