時の党首人気が生む「チルドレン」議員問題を案じた「時事放談」など

◆豊田議員の声を分析

 今回の東京都議選に与えたテレビの影響は大きかったと言えよう。例えば、週刊誌が告発報道した豊田真由子衆院議員の秘書に浴びせた暴言は、活字で表現するには限界がある。テレビでは生声が伝わりインパクトは数倍だ。告発が元秘書の証言だけなら再現シーンとなるだろうが、その場合でも俳優をしてうまく演技できただろうか――。

 というのは、2日放送のフジテレビ「新報道2001」で豊田議員の声帯の振動数を専門家が分析していたからだ。国会質疑など平常は250ヘルツだが、録音データの暴言は910ヘルツに達し、「ここまで上がってしまうと演技とは言いづらい」「理性でのコントロールから外れている状態になっている」(日本音響研究所所長・鈴木創氏)という。ちなみに死に直面した悲鳴で800ヘルツとの解説だった。

 豊田氏が自民党を離党したのは6月22日。暴言には、「学歴エリートではなく、人としてどうだというところが欠けている」(日本の構造研究所代表・中田宏氏、前横浜市長)など人格・資質を問うコメントが代表的だが、離党で幕引きとならず、声帯振動数のように角度を変えてはテレビが取り上げ、結局、「バカ!」などの絶叫が都議選投票日まで流れ続けた。

 「新報道」の番組冒頭は都議選最終日の1日、安倍晋三首相の応援演説現場(東京・秋葉原)に登場した森友学園前理事長・籠池泰典氏にマスコミのカメラが殺到する騒動だった。「応援に来た」という籠池氏は、首相の妻、昭恵氏に「返そうと思った」という封筒入りの札束(100万円)まで披露。国会で野党が追及した森友・加計学園問題の渦中の人物がテレビで“加勢”したのは、自民党以外にだったことは明らかだ。

◆稲田氏「厚遇」と懸念

 選挙終盤の6月27日に稲田朋美防衛相が応援演説で発した「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」との失言も大きく取り上げられた。その日のうちに稲田氏は撤回したが、2日放送のTBS「時事放談」でも、「前代未聞の発言」として司会の御厨貴氏がトップで問題にした。

 番組は憲法、自衛隊法などから公務員・自衛隊員の政治的中立を再確認。ゲストの自民党・村上誠一郎元行革担当相は「弁明の余地はない」と述べながらも弁護士出身で法律に詳しい稲田氏の発言に戸惑った。早稲田大学教授・片山善博氏は「中国の人民解放軍は中国共産党の下にある。自民党も一強と言われてそういう意識があったのではと疑わざるを得ない」と手厳しい。

 村上氏はまた、「任命権者が大所高所から判断すべきだが、安倍さんはお友だちを大切にするあまり、いろんな面で厚遇しすぎるのではないか」と懸念した。「泣いて馬謖(ばしょく)を斬る」の故事を噛(か)みしめる時かも知れない。さまざまに「一強」の体質が問われている。

 同番組でも豊田議員ほか不祥事が目立つ2回生議員に触れ、村上氏は中選挙区時代に落選後、「5人から10人の座談会を1000回やった」と秘書とチームで運動した苦労を振り返った。さらに「小泉チルドレン」「小沢チルドレン」がほとんど残らず、「安倍チルドレン」もどうなるかと指摘。時の党首人気で楽々当選する若手議員の量産が弊害視されつつある。

◆小池知事は模範解答

 今回、これが当てはまるのは圧勝した都民ファーストの会だ。開票特番で、NHKとは別に民放で国政選挙並みに健闘していたテレビ東京「池上彰の都議選ライブ」で、ジャーナリストの池上氏は小池百合子都知事に「過去には何とかチルドレンと呼ばれるような若手議員が大量に当選して後がうまくいかない例がある」と問い質した。

 同番組は開票中の2日夜の1部、議席が確定した3日未明の2部という構成。2部では選挙中の小池氏の公用車に同行した池上氏の取材を放映し、マクロン仏大統領の新党を引き合いに「これまで政治にタッチしたことがない政治の素人という人が大勢入ってきて都民ファーストの会と二重写しに見える」と聞いていた。これら池上氏の質問に、党代表(当時)の小池氏は「しっかり修行を積む」など模範解答で応じたが、大量当選、大量落選と浮沈の激しい昨今の選挙状況に政治の不安定を考えざるを得ない。

(窪田伸雄)