区割り審勧告、速やかな法案成立で衆院選を
政府の衆院議員選挙区画定審議会(区割り審)が安倍晋三首相に「0増6減」となる衆院小選挙区の区割り改定案を勧告した。これを受け、安倍内閣は来月にも改定のための法案を閣議決定し、通常国会会期末の6月18日までに成立を図る方針だ。速やかに成立させ、次期衆院選を新たな区割りで実施する必要がある。
過去最多の97選挙区改定
衆院選挙制度改革をめぐっては、2012年11月に行われた臨時国会の党首討論で、民主党政権の野田佳彦首相と野党だった自民党の安倍総裁が、衆院解散の条件として「定数削減」を総選挙後の政権担当者が行うと約束した。定数削減は、消費税率引き上げに理解を得るための「身を切る改革」と位置付けられていた。
この間、身を切る改革の意味合いが薄れ、最高裁が15年11月に「1票の格差」が最大2・13倍で行われた14年12月衆院選を「違憲状態」と判断したことから、格差是正の必要に迫られるようになった。
裁判所が衆参の国政選挙に関して「1票の格差」をめぐる判断を下すのは、弁護士グループが選挙無効を求めて訴訟を起こしたからであり、判決文では国会が自ら進んで是正を図るように要求するのが常だ。国会が後手に回るのは怠慢だと言わざるを得ない。
今回の区割り審勧告は過去最多の97選挙区に改定が及んだ。当選者を多く出している与党ほど党内の候補者調整が難しく、過去には紛糾する場合もあった。地盤のある議員、候補者が自分の選挙区に愛着を持つことは理解できる。
しかし、小選挙区制度は党営選挙を促すために導入されたものだ。選挙区に関しては、とうに“一国一城”という意識を払拭(ふっしょく)していかざるを得ない時代になっている。
改定作業は昨年11月以降、区割り審が進めてきた。15年の簡易国勢調査結果から算定された20年の見込み人口を基に、格差を2倍未満に収めた。もっとも「0増6減」の今回の勧告に従っても「1票の格差」は最大1・999倍だ。
20年以降はさらに格差を小さくするために都道府県人口をある数で割って定数を決める「アダムズ方式」を導入することになっている。人口の少ない県でも最低2議席の定数が割り当てられる仕組みであるため、さらに多くの選挙区で区割りが改定されよう。
今回の勧告でも定数が1減となるのは、青森、岩手、三重、奈良、熊本、鹿児島の6県で、いずれも人口が減少している地方だ。
都市部に人口が集中し、国会議員も都市部選出者が多くなることは、地方よりも都市部の方に国政上の関心が高まる傾向となることが否めない。
政治改革に資する議論を
逆に、都市部の選挙区の投票率は地方と比べて低い傾向にある。こうした政治への関心度の違いも問題ありと指摘せざるを得ない。
もとより完全な制度は存在しない。弊害などを検証し政治改革に資する議論を不断に進める必要がある。