改憲項目整理、国会憲法審査会で原案作りを


 通常国会の会期中に日本国憲法施行70周年の節目を迎えるのを前に、各党は憲法改正の具体的な項目について論議を進めている。時代の変化などで法律が改められるように、憲法も必要に応じて改正しなければならない。各党は衆参両院の憲法審査会での審議に結び付け、改正原案をまとめてほしい。

各党で議論や検討進む

 安倍晋三首相は施政方針演説で「憲法施行70年の節目に当たり、私たちの子や孫、未来を生きる世代のため、次なる70年に向かって日本をどのような国にしていくのか。その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めよう」と各会派に呼び掛けた。これを受け、自民党の二階俊博幹事長は「成案を得るべく努力をしたい」と述べた。

 自民党の憲法改正推進本部は改憲項目の絞り込みに着手し、優先事項に掲げる緊急事態条項について議論している。公明党の漆原良夫中央幹事会長はラジオ番組で「緊急事態と衆院の任期の問題」を環境権などとともに議論する必要があるとの認識を示している。

 一方、民進党の憲法調査会は、首相の衆院解散権の制限、地方自治体の権限を強めるなどの統治機構改革、違憲立法審査、新しい権利などの検討を進めている。日本維新の会は国会の審議を通じて「憲法改正による教育無償化」を提言している。

 衆参両院の3分の2以上の賛成を必要とする改憲発議を行うには、各党の議論の中でも十分なコンセンサスを得なければならない。その上で、国の針路を拓(ひら)いていくため、活発な議論を言論の府・国会の憲法審査会において進め、改正原案を示すべきであろう。

 緊急事態条項の議論では、衆院議員の任期延長を憲法でどう定めるかが問題である。阪神大震災や東日本大震災の際には、実際に多くの地方選を延期せざるを得なかった。それでも、地方選の場合は、被災地域の状況に応じて国会で延期のための臨時特例法を制定できた。

 だが、衆院議員の任期は憲法で4年(45条)と定められている。同43条では「選挙された議員」でなければならないとされている。東日本大震災では大津波が発生し、地域によっては選挙管理委員会が置かれている町役場ごと流されるなど行政が機能不全に陥った。

 もし、衆院議員の任期満了の直前、あるいは衆院選の最中であれば、当然それらの地域での投開票は不可能だ。国権の最高機関である国会の議員の正当性に関わる問題である。むしろ、現憲法にこのような落ち度を認め、条文を補わなかったことが不自然だ。改憲手続きの法整備が戦後長らく阻止された弊害は実に大きかった。

 緊急事態の参政権保障を

 2014年6月に改憲手続きが整備され、昨年の参院選の結果、改憲を視野に置く各党派の議会勢力が衆参両院とも3分の2以上を占めるなど憲法改正は現実味を帯びている。

 国民主権の基本である参政権を緊急事態にどのように保障するのか、衆院任期をめぐる条項を改正するための努力を各党派とも惜しんではならない。