辺野古工事 「唯一の解決策」を急ぎたい
政府は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設のため、名護市辺野古沖の海上工事に着手した。辺野古移設は在日米軍の抑止力維持と沖縄の基地負担軽減を両立させる唯一の方法だ。着実に工事を進めなければならない。
政府が海上作業開始
海上工事の開始は、沖縄県の仲井真弘多前知事の埋め立て承認取り消しをめぐる翁長雄志知事の敗訴が昨年12月に確定したのを受けた措置だ。まずは、護岸造成による汚染を防ぐため「汚濁防止膜」を設置する作業を3カ月程度かけて行う。膜を固定するため、海中へのコンクリートブロック投下も始まった。
普天間飛行場は住宅密集地に囲まれ、学校にも隣接。「世界一危険な飛行場」と呼ばれる。万一大事故が起きて地元住民が犠牲になれば、県民の強い反発で在日米軍の抑止力維持が難しくなる恐れもある。辺野古への移設を急ぐのは当然だ。
一方、翁長氏は工事の即刻中止を求めるとともに、新たな対抗策として埋め立て承認後に生じた問題に基づき効力を失わせる「撤回」を検討している。しかし、移設の是非は最高裁の判決で決着が付いたはずだ。
判決は「県内の基地面積が相当縮小されることなどを考慮して埋め立てを承認した前知事の判断は明らかに妥当性を欠くものではない」と指摘している。判決を受け、翁長氏は埋め立て承認取り消しを撤回したのではなかったか。これ以上、辺野古移設を妨害すべきではない。
翁長氏は先月末から今月初めにかけ、訪問先の米国で辺野古移設への反対を訴えたが、この時に東京では、安倍晋三首相とマティス米国防長官が辺野古移設が唯一の解決策であることを確認した。マティス氏は、中国が一方的に領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島が、米国の対日防衛義務を定める日米安保条約5条の適用対象であることも明言した。
強引な海洋進出を行う中国や核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威は高まるばかりだ。尖閣を抱える沖縄県の知事である翁長氏は、日本を取り巻く安全保障環境の厳しさを直視する必要がある。
翁長氏は辺野古移設反対を掲げ、2014年の知事選で勝利した。だが先月の宮古島市長選では、候補擁立をめぐって翁長氏を支える「オール沖縄」陣営が分裂。支持組織をまとめていた安慶田光男氏が、教員採用をめぐる不祥事で副知事を辞任したことも痛手となっている。
どのような対抗策を講じても移設を止めることはできない。翁長氏は日米同盟強化のためにも辺野古移設に協力すべきではないか。政府も翁長氏の説得に努めるとともに、沖縄県民に辺野古移設の必要性を丁寧に説明することが求められる。
沖縄の負担軽減進めよ
沖縄県では昨年12月、米軍北部訓練場(東村、国頭村)の約半分の敷地が返還された。返還面積は約4000㌶で、沖縄県が1972年に本土復帰を果たして以降、最大規模となる。
日米両政府は辺野古移設への理解を得るためにも、沖縄県の基地負担軽減を進めていく必要がある。