共謀罪、野党は国民の不安をあおるな
安倍晋三首相は、共謀罪の構成要件を改め「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案について「国内法を整備し、国際組織犯罪防止条約を締結できなければ、2020年東京五輪・パラリンピックを開けないと言っても過言ではない」と述べた。
この法案は後半国会の焦点となる。速やかに成立させることが求められる。
国際条約締結の条件
組織的なテロの防止を目的とした国際組織犯罪防止条約は、すでに187の国・地域が締結している。日本は先進7カ国(G7)で唯一、未締結であり、これでは国際社会とのテロに関する情報共有もままならない。東京五輪を見据え、政府は条約の年内締結を目指している。そのためには、共謀罪など国内法の整備が条件となっている。
共謀罪は犯罪を実行しなくても謀議に加わったことを構成要件とする罪だ。政府はこれまでに計3回、国会へ関連法案を提出した。しかし、野党や一部メディアの「一般の市民団体や労働組合も対象になる」「居酒屋で同僚に『上司を殴る』などと相談しただけで処罰される」といった批判を受け、いずれも廃案になっている。
このため今回の政府案では、名称を「テロ等準備罪」とし、テロ組織や暴力団などの「組織的犯罪集団」に対象を限定。さらに、凶器購入資金の調達や犯行現場の下見など、犯罪を実行するための「準備行為」を要件に加えた。
対象となる犯罪も当初は「懲役・禁錮4年以上」に相当する676の罪を想定していたが、公明党の要求を受け、300程度に絞り込む方向だ。一般市民が処罰対象となることはあり得ない。
ところが、野党は今回の改正案についても「国民の思想や内心まで取り締まる。現代版『治安維持法』だ」(共産党の小池晃書記局長)などと、国民の不安をあおるような批判を繰り返している。的外れであり、極めて無責任だと言わざるを得ない。
テロの脅威は高まっている。世界中でテロが頻発し、昨年7月にはバングラデシュの首都ダッカで邦人7人が犠牲となった。過激派組織「イスラム国」(IS)などは、日本をテロの標的にすると繰り返し表明している。対策強化は喫緊の課題だ。
五輪のような大規模なスポーツイベントは、テロリストに狙われやすい。1972年のミュンヘン五輪では、パレスチナ武装組織がイスラエル選手団の宿舎を襲撃し、11人を殺害した。2013年には、ボストン・マラソンのゴール付近でチェチェン系の兄弟が仕掛けた爆弾2個が爆発し、子供を含む3人が死亡した。
東京五輪でテロの発生を許さないためには、速やかに今回の法案を成立させ、共謀罪を創設する必要がある。テロが起きてからでは遅いのだ。
国民の安全が第一だ
民進党や共産党などは安全保障関連法廃止を求めているが、これも日本を取り巻く安保環境の厳しさを無視した暴論だ。
第一に考えなければならないのは、党利党略ではなく、国民の安全である。