米国防長官来日、中朝への抑止効果大きい


 マティス米国防長官が来日した。トランプ政権の閣僚として初の日本訪問である。安倍晋三首相との会談では、米国が「100パーセント」日本を支持すると表明した。トランプ政権によるアジア重視の公式メッセージである。

 尖閣に安保条約適用

 両氏は、地域の安全保障環境が厳しさを増す中、「強固な日米同盟」を堅持していく方針で一致。マティス氏は、日本の施政下の領域に対する米国の防衛義務を定めている日米安全保障条約第5条が「沖縄県の尖閣諸島に適用される」と明言した。

 尖閣をめぐっては中国が一方的に領有権を主張し、中国公船が領海侵入を繰り返している。マティス氏の発言は、中国の「力による現状変更」を決して容認しない考えを示したものだと言えよう。マティス氏は「安保条約第5条が重要だと明確にしたい。それは5年先、10年先も変わらない」と表明した。

 中国は南シナ海でも人工島の軍事拠点化を進めており、地域の「公共財」である日米同盟の重要性は高まっている。首相は「日本は防衛力を強化し、自らが果たしうる役割の拡大を図る」と伝えた。

 また、沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題に関しても、名護市辺野古に代替施設を建設する現行計画の履行を確認した。在日米軍の抑止力維持と沖縄の基地負担軽減のため、日本は移設を着実に進める必要がある。

 トランプ大統領は選挙戦中、日本と韓国に自主防衛と核武装を促すような発言をした。在日米軍の駐留経費に関しても、日本側の全額負担に言及した。当選後、同盟国を突き放すような発言はなくなったが、トランプ氏は就任演説で、日本やアジアの安全保障にどう関与するかに触れなかった。

 米国の同盟国は、アジアがトランプ政権の優先順位のどのあたりにくるのか、本音を知りたいところである。その意味では政権発足直後のマティス氏による日韓訪問で、両国との同盟に対する米国のコミットメントを再確認し、3カ国による安全保障協力の一層の強化を明確にしたことの意義は大きい。

 マティス氏は稲田朋美防衛相との会談後、在日米軍駐留経費について「日本と米国のコスト分担の在り方は他国の手本になるものだ」と明言。稲田氏も「適切な負担と考えている」と述べた。こうしたマティス氏の発言が、日本とトランプ氏との信頼関係強化につながることが期待される。

 日本の前に訪れた韓国でマティス氏は、北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験への懸念が高まる中、北朝鮮が核兵器の使用を選択した場合は「効力のある圧倒的な」報復で応じると警告した。日本でも「核の傘」提供を含む米国の「拡大抑止」を確約した。核保有国としての米国の決意を示したものだ。

 同盟国の不安解消を

 マティス氏に対するトランプ氏の信頼は厚い。マティス氏の日韓歴訪における発言は中国、北朝鮮への大きな抑止効果を持つ。トランプ大統領は安倍首相との会談でも、同盟国の不安を解消すべきだ。