各党代表質問、日本の未来のため切磋琢磨を
通常国会で安倍晋三首相の施政方針演説などに対する各党代表質問が衆院で始まり、23日は民進党の野田佳彦幹事長、大串博志政調会長、自民党の二階俊博幹事長が質問に立った。
野田氏は内外の情勢に「人類が培ってきた叡智(えいち)の真価が問われている」と大局観をもって質問に臨んだが、政府・与党と切磋琢磨(せっさたくま)し得る問題意識は示したと言える。
野田氏が「三つの叡智」
野田氏は、未来を慮(おもんぱか)る能力、地球を俯瞰(ふかん)する視点、紛争をルールに基づいて理性的に処理するという作法を「三つの叡智」として安倍政権の施政方針を問いただした。この中で、財政問題と安倍政権の経済政策であるアベノミクス、54兆円の対外経済支援の成果、各国との関係、天皇陛下の退位などに言及した。
各国との関係をめぐっては、日韓合意と釜山の日本総領事館前への少女像設置問題、中国の南シナ海問題などで野田氏と安倍政権との認識に大きなずれはなかった。日露関係では、北方領土問題に進展が見られなかったプーチン大統領との首脳会談に関して率直に国民の思うところを野田氏は問いただしたと言えよう。
しかし、日米関係については民進党として両国関係を重視するのか、同盟への見解は触れなかった。米国第一主義を掲げるトランプ大統領の就任に際し、就任前の記者会見で貿易赤字に関して日本を名指しし、批判をしたことから、世界貿易機関(WTO)のルールなど「法の支配」に基づいた主張をするよう首相に求めた。
野党として、米マスコミがトランプ氏を厳しく批判していることと合わせて首相のイメージダウンを図ったとみることもできる。だが首相が答弁したように、日米同盟を重視し、首脳同士の信頼なくして「主張」もできない。
財政問題について、野田氏がアベノミクスでは「2020年の基礎的財政収支の黒字化は達成不可能と考える」と訴えたことは的を射ている。政府は16年度の名目経済成長率を3・1%と予測したが、見通しは野田氏の指摘の通り甘かったと言わざるを得ない。
しかし、財政問題は短期的な解決は不可能だ。野党が期待するほどアベノミクスの批判が国民の間で高まらないのは、野田氏が首相だった民主党政権の時代と比べ、安倍政権発足後に賃金や雇用、新卒就職率などが改善したためだ。今後は政府・与党に税収増につながる成長戦略を促すことが期待される。
また、野田氏は今後の歳出について「人への投資」を呼び掛けたが、これが人口減少に歯止めを掛け、経済成長に結び付くようにするには、長期的な視点に立って政策を講じなければならない。
建設的議論で競い合え
財政や社会保障に関して、旧民主、自民、公明の3党は「税と社会保障の一体改革」で合意し、消費税率引き上げを決定した経緯がある。
与党の自公両党と野党第1党の民進党が日本の将来について問題意識を共有し、建設的な議論で競い合うことが望ましい。