豊洲市場問題、求められる都政の抜本改革
東京都の豊洲市場(江東区)の建物下で土壌汚染対策の盛り土が行われなかった問題は、「いつ、誰が」盛り土をしない方針を決めたのか内部調査では特定できなかった。
小池百合子知事には事実の徹底解明とともに都政の抜本改革が求められる。
縦割りで責任不明確
調査結果をまとめた報告書によると、盛り土を行わずに地下空間を設ける案は、担当部局である「中央卸売市場」内で2008年10月ごろに検討を開始。実施設計が完了した13年2月末までに段階的に決まった。
土壌汚染対策に関しては、専門家会議が08年7月に敷地全体で盛り土を行うよう提言した。重大な計画変更を誰が行ったのか分からないというのは不可解であり、無責任極まりない。今後も調査を続け、事実を徹底解明する必要がある。
見過ごせないのは、組織内の連携不足だ。中央卸売市場の部課長会で地下空間を設置する方針が11年8月に確認されたが、当時市場長だった中西充副知事には説明されなかった。この部課長会でどのような議論があったかの記録もなく、今回の調査の聞き取りで判明したという。
また、市場は都議会やホームページで「全面盛り土」の説明を続けていた。この背景にも、土木、建築など各部門の他部に対する無関心があった。
都議会の答弁に関しては前例踏襲で、地下空間の存在を把握していた幹部も「土壌汚染対策の基本的な考え方を述べている」と思い込んでいた。しかし都民に間違った説明を行っていたわけであり、到底許されるものではない。
小池氏は「歴代の部署の引き継ぎがいいかげんだった。最も大きな原因はガバナンスや責任感の欠如だ」と批判した。縦割りで責任の所在が不明確という都庁の構造的な問題に切り込むことが欠かせない。
小池氏は、舛添要一前知事の政治資金流用による辞職後の7月の知事選で当選。リオデジャネイロ五輪の閉会式では、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長から五輪旗を受け取った。
一方、就任直後から都政改革に力を入れ、東京五輪に関しても関連予算の検証を行った。就任後初めての都議会定例会では、豊洲市場問題について「都民の信頼を失ったと言わざるを得ない」と述べた。
今回の調査結果を受け、小池氏は副知事や局長級の幹部で構成する「都庁マネジメント本部」を新設し、縦割り排除や情報共有に取り組む方針だ。抜本改革で信頼回復に全力を挙げなければならない。
小池氏は8月、今年11月に予定されていた築地市場(中央区)の豊洲市場への移転の延期を決めた。安全性への懸念や巨額で不透明な費用などを理由に挙げている。
正確な情報の発信を
豊洲市場では先月末、3地点の地下水から環境基準をわずかに上回るベンゼンやヒ素などの有害物質が検出された。人体への影響はないとみられているが、不安は高まっている。都は都民や国民に正確な情報を発信する必要がある。