東京五輪、コスト意識の低さ改善を


 2020年東京五輪・パラリンピックの関連予算を検証している東京都の調査チームが、今のままでは大会開催費の総額が3兆円を超えるとの推計を明らかにした。

 総額3兆円超と推計

 開催費は招致段階で7340億円と見積もられていた。しかし、調査チームが公表した報告書によると、新国立競技場など競技施設や周辺インフラの整備だけで経費は7640億円。このうち、約800億円と見込んでいた仮設施設(大会後に撤去)の建設費が2800億円程度に膨らむ。

 さらに、大会中の警備や輸送などに1兆2000億~1兆6000億円の費用が掛かると試算した。割高な工事発注など、都の予算管理の甘さの影響でコストがさらに増え、全体では3兆円を超える可能性があるという。本当に必要な経費を惜しむべきではないが、コスト意識が低いのであれば改善する必要がある。

 調査チームは経費を縮減するため、都が整備する3施設について大幅な見直しを求めた。ボート、カヌーの会場となる「海の森水上競技場」(整備費491億円)に関しては「復興五輪」の観点からも宮城県登米市のボート場活用などへの変更、競泳会場の「アクアティクスセンター」(同683億円)は、近くの東京辰巳国際水泳場の活用や規模縮小、バレーボール会場の「有明アリーナ」(同404億円)は、規模縮小や既存施設の活用を提案した。いずれも、五輪後の利用者数などの見積もりが過剰で、費用対効果が不透明だと指摘している。

 これについて小池百合子都知事は「大変重い提言だ。ベストのソリューション(解決策)を見つけていきたい」と表明。「レガシー(遺産)のある東京大会ができると確信しているし、成功させなければならない」と語った。報告書を踏まえ、都は具体的な検討に着手する。

 国際オリンピック委員会(IOC)や各国際競技団体(IF)との調整があるため見直しは簡単ではないが、できる限りの費用圧縮に努めるべきだ。

 報告書は、国、都、大会組織委員会の「寄り合い所帯」となっている現行の体制を「社長と財務部長のいない会社と同じ」と表現。開催費が膨れ上がる要因になっているとして、都の組織委への指導・監督強化を打ち出した。これに対し、組織委の森喜朗会長は「われわれは都の下部組織ではない」と不快感をあらわにした。

 しかし、主導権争いをしている場合ではあるまい。東京五輪に関しては、これまでも新国立競技場の整備計画やエンブレムの白紙撤回という問題が生じ、国民を失望させてきた。報告書の提案が妥当かどうかは別としても、関係者が協力して司令塔をはっきりさせた体制をつくるべきだ。

 成功に向け入念な準備を

 リオデジャネイロ五輪で日本は、史上最多の41個のメダルを獲得した。「金メダル数世界3位」という東京五輪の目標達成への期待は高まっている。

 東京五輪成功に向け、関係者はコスト面も含め入念な準備を行ってほしい。