集団的自衛権の行使禁止は憲法上許されない
安全保障関連法が成立して1年が経過した。これで安保法制は完備したと見る向きがいる一方、民進党は蓮舫新体制下でも集団的自衛権の行使容認部分を憲法違反とし、安保法を廃止するよう主張している。
いずれの見方も、大きな間違いを犯していると言わねばならない。
安保法成立から1年
昨年9月の安保法成立をめぐっては、当時の民主党や共産党などが「成立阻止」で足並みをそろえた。集団的自衛権の行使違憲論が根強く残っているのは、政府の説明が依然として55年体制下の解釈を引きずっているためだ。
集団的自衛権は個別的自衛権とともに国際法上の基本的権利である。従って、国際社会における定義を受け入れれば、国民の疑念も解消する。
また、人権同様に自衛権も前憲法的概念であり、成文憲法で否定することは許されない権利である。この基本的立場を確認することも必要だ。未(いま)だにわが国の憲法学に大きな影響力を持っている宮沢俊義氏も「自衛権そのものは9条によって、なんらの影響も受けない」と説明している。
安保法制が完備したという見方も間違っている。国際法上の自衛権の行使範囲は、冷戦後のテロの活発化やサイバー戦の登場で大きく拡大しつつある。自衛概念を万古不易と考えて固定的に捉えてはならない。
自衛隊の国家防衛行動についても、国際社会の常識に反した議論がまかり通っている。「国内法がないから尖閣諸島を守れない」といった類いの主張が依然としてなされている。
国家が自国領土を外国の侵略から守る権利の基本は国際法にある。これを受けて国内法は施行法令と位置付けられるものである。
それに、グレーゾーンと言われる分野まで法令で事前に定めているのも致命的誤りである。法令の規定通り相手が行動すると思うのは、戦いのみならず各種の運動競技の本質をも理解していないと言える。
一方、国際社会の平和維持のための行動についても、わが国は国際ルールを無視した行動を取っている。安保法成立後も、多国籍部隊のマニュアルや指揮に従わないケースが多く残っている。
国連体制下で国家の軍事組織が他国領域で行動できるのは、多国籍軍の一員として行動する(集団安全保障)か、自衛権行使の場合に限定されている。軍事組織を多国籍軍に派遣するか否かを判断する権利は、国家主権の一部だ。しかし多国籍軍に派遣された軍事組織は、その司令部の作戦指揮、マニュアルに従うのが国際ルールである。
国際ルールに従うべきだ
それを遵守(じゅんしゅ)しないのは、国連憲章違反であり、国際法上の論拠がないことになる。現状では国際社会から大目に見られているが、いつまでもこの甘えが許容されるわけではない。
わが国では国内問題解決の際、日本独自の方法を採用すべきものまで欧米主要諸国の法令、行動を参考にしがちである。国際問題こそ、国際ルールに従うべきなのだ。