もんじゅ廃炉、核燃料サイクルを堅持せよ


 政府は高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について、廃炉を含め抜本的な見直しを行うことを決めた。地元と協議しながら廃炉に向けて最終調整を進め、年内に結論を出す方針だという。もんじゅ開発の挫折は残念だが、わが国の原子力政策の根幹にある核燃料サイクルは死守しなければならない。

 高速炉開発姿勢示せ

 政府内では、もんじゅ開発に約1兆円の費用が投じられながら、トラブルや安全管理のミスでほとんど運転しておらず、これ以上の存続は国民の理解を得るのが難しいとの見方が強まっていた。政治的判断としてやむを得ない面もあるが、戦後の原子力政策を担い、核燃料サイクル実現を目指してきた政府・自民党にとっても痛恨事だ。

 政府は、新設する官民合同の会議で今後の高速炉開発を策定することにしている。既に決定しているが、フランスが2030年ごろの運転を目指す実証炉「ASTRID」の計画に参加して技術と経験を蓄積するのもその一つ。

 また実験炉「常陽」(茨城県大洗町)を活用した研究も進めることになっている。しかし、もんじゅ開発頓挫で研究者の間でも挫折感は大きく、果たして高速炉開発が今後、波に乗るかどうか。さらに実用化については未知数だ。

 高速炉開発が重要である理由の一つは、現在の軽水炉による原子力エネルギーは石油と同程度の量しか期待できず、わが国の原発はこのままだとわずかにエネルギーを供給しながら終末に向かうことになってしまうということだ。

 また、わが国は非核兵器保有国では例外的に日米原子力協定でプルトニウム利用を認められている。核燃料サイクルを放棄し、青森にある日本原燃の再処理工場も稼働しなくなれば、使用済み燃料の速やかな処分を迫られ、原子力政策の抜本的な見直しを余儀なくされる。政府は高速炉開発に着実に取り組む姿勢を示す必要がある。

 ただし、もんじゅ開発の過程を見ると反省点も少なくない。開発当初、研究者の間に軽水炉に続いて高速炉もすぐに成功するだろうという、今から思えば甘い発想があったことは否めない。しかし高速炉は独自の技術体系を持ち、独特の難しさがあることが分かってきた。

 いわば、世界に先駆けて巨大技術を開発することの困難さを、日本人が初めて体験する機会ともなった。研究者の足並みが乱れただけでなく、政府、国民も開発に対する関心を弱めてしまったということがある。

 高速増殖炉や核燃料サイクルは新たな技術の開発へのチャレンジだ。当然柔軟性は必要であり、研究開発の進捗(しんちょく)状況に照らしてその都度粘り強く議論し、計画を修正しながら目標を実現するという道も可能ではあったように思う。

 先端科学に原子力必要

 一方、原子力開発は原発によるエネルギー獲得だけが目的ではない。今日、がん治療の放射線応用、元素創成の解明など先端核科学をはじめ、多岐にわたる分野で原子力技術が使われている。その開発も遅らせてはならない。