「共謀罪」法案、テロ防止へ今回こそ成立を
政府は「共謀罪」を織り込んだ組織犯罪処罰法改正案を次期臨時国会に提出する方針を決定した。
過去3回、国会に提出されたが、野党の反発などで廃案になった経緯がある。特に、テロをはじめとする犯罪の国際化等に対応したものであり、4年後の東京五輪での治安維持のためにも今回こそ改正を実現すべきである。
過去に3回廃案となる
今回の法案では、罪名を「テロ等組織犯罪準備罪」とし、対象を「組織的犯罪集団」に絞り込んだ。犯罪の計画に、資金の提供など具体的な「準備行為」を伴った場合のみ処罰できることとしている。
共謀罪創設への取り組みは、平成12年末の国連総会で「国際組織犯罪防止条約」が採択されたのをきっかけとしている。欧米主要諸国では、共謀罪を定めているのが一般的だ。この条約への加盟には国内法で共謀罪を設けることを必要条件としており、日本は13年前に発効した同条約を批准できない状況が続いている。
この共謀罪の創設に対する主な反対論は、「結果が発生した『既遂犯』への処罰が、日本の現行刑法の大原則」との日弁連などの主張である。その半面、日弁連では、現行の刑法には国際組織犯罪防止条約の加盟条件に該当するような規定があるので、共謀罪は必要ないとの矛盾した主張をもしている。それならば、共謀罪を設けても、日弁連の指摘するような懸念はないということになる。
憲法で同じことが言えるが、社会情勢の変化、電子機器の開発に伴う犯罪形態の変化等に全く無関係に現行法制を順守しておけばよいという頑迷固陋(ころう)な主張である。“革新”を自称しながら、その実は“守旧”に凝り固まっている反対論と言わねばならない。国内法はその国の伝統文化を踏まえて制定されるべきものだが、国際社会、国内社会の変化を全く無視してよいというわけではないのだ。
警察などによるスパイによって情報を取得するなど捜査権限が拡大され、監視社会になってしまうとの懸念もある。「飲み屋でしゃべったことで、罪に問われかねない」といった、反体制派が常に用いる荒唐無稽な反対論もある。安全保障法制をめぐり「戦争法案であり、徴兵制が採用される」との宣伝で一定の効果を挙げたために味を占めたようだ。
犯罪が実行されれば、日本国民のみならず関係諸国民にも被害を及ぼすことになる。犯罪発生を待つのでなく、可能ならば事前に食い止めることが望ましい。これまでの政府の改正案は、拡大解釈や乱用を防ぐ十分な歯止めが規定されている。
監視社会にはならない
この条約は、既に国連加盟国の9割以上が「共謀罪条件」をクリアして加盟している。日本が欧米の自由主義諸国と同じような共謀罪を設けると、監視社会になるといった議論は、自らを貶(おとし)めるものである。
それだけではなく、結果において組織犯罪者を擁護し、その上、犯罪を助長し、国民の被害を増大させることになることを自覚すべきだ。