防災の日、気候変動の脅威に対処を
きょうは「防災の日」。10万人強の死者・行方不明者を出した関東大震災から93年がたつ。わが国は地震や火山噴火が多い上、水害に襲われる危険性が常にある。自然災害の多い列島に生きていることを国民一人ひとりが自覚し防災意識を高め、その備えに努めたい。
「自助」の強化が大切
4月に熊本県中心部で起きた熊本地震は大きな被害を出し、いまだ復興は半ば、同県では内陸直下型地震の被害想定を見直すに至った。東日本大震災以降、全国的に火山活動が活発化し噴火に至るケースも出ている。
一方、台風10号による大雨では、東北や北海道で被害が大きかった。岩手県では川が氾濫し、高齢者グループホームに水が流れ込んで9人が死亡。県内では他に2人の死亡が確認された。近年の豪雨被害は従来予想されなかった地域にも出ており、予断を許さない。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第1作業部会は2007年に「今後、ほとんどの地域で大雨の頻度(もしくは総降水量に占める大雨による降水量の割合)の増加する可能性がかなり高い」という見解を発表した。
気候変動の影響もあって、豪雨禍をはじめ、自然災害とその被害の増加が憂慮される。首都圏でも1時間50㍉の大雨が珍しくなくなった。
防災には「自助、協助、公助」が必要だが、まず自らの心構え、備えの強化が重要である。自助をサポートする策の一つとして、国土交通省では局所的な雨量をほぼリアルタイムに観測可能なXRAIN(XバンドMPレーダネットワーク)づくりを進めている。この体制ができても老若男女すべてが利用することは難しかろうが、うまく活用すれば土砂災害による被害などはかなり抑えられよう。
そのためには家庭、町内のコミュニティー単位で、この雨量情報を伝えるリーダー役を育てていく取り組みをぜひ行いたい。よく言われるようになったレジリエンス(しなやか)な防災枠組みづくりの一環でもある。
一昨年8月広島市で起きた豪雨被害を機に、土砂災害防止法が改正され、行政は住民に対し遅滞なく避難勧告や避難指示を出すことが義務付けられるようになった。この情報に留意しつつ、まず家庭やコミュニティーが災害時の対策をしっかりと講じることだ。
また、各自治体が用意し、各戸に配布されているハザードマップを平時から活用する必要がある。ただし同マップには改善すべき点も多い。災害の規模、時間など災害のシナリオ別の避難経路や複合災害への対応についてはほとんど手付かずだ。住民も知恵を出し合い、各自治体がきめ細やかなハザードマップ作りをする時期にきている。
防災知識の体系的整備を
一方、竜巻などの多様な自然災害が各地で起き被害をもたらしている。それに対処するのに、例えば前兆現象はどのようなものがあるか、遭遇した時、どこへどういうタイミングで逃げればいいのか。
知識を体系的に整え、小中学校で「防災学」として教える機会が生まれることを望みたい。