舛添都知事辞職、停滞した都政の早期打開を


 東京都の舛添要一知事が辞職することになった。自らの政治資金の私的流用問題について説明責任を十分に果たせず、都民の信頼を失い、停滞した都政を打開する見込みが立たない以上、身を引くのはやむを得まい。都政を早期に正常化し、2020年の東京五輪・パラリンピックを迎えるにふさわしい新たな都知事の選出が肝要である。

 大衆迎合にも問題

 舛添都政は「東京を世界一の都市にする」と訴え、「金の掛からない政治の実現に全力を挙げる」ことを公約としてスタートした。ところが、自らの「政治とカネ」の不適切な問題が約3カ月前に発覚し、各方面から集中攻撃を受けた。

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東京都議会本会議で、退任のあいさつをする舛添要一知事=15日午後、東京都新宿区

 確かに、高額な海外出張費や、公用車での週末の神奈川県湯河原町の別荘通い、知事就任前の政治資金の使途、家族旅行や美術品購入などの説明には説得力が欠けていた。調査を依頼した外部の弁護士によると、違法性はないが不適切な使用が多々あった。

 当初は、甘い判断をしたのかもしれない。しかし、「不適切な使用」はあまりにも常識と懸け離れていた。徐々に追い込まれて不明瞭な説明が目立つようになった。給与の全額返上を表明し「全身全霊で都政のために働きたい」と訴えたが、すでに都民の心は知事から離れてしまった。都議会で与野党全会派が不信任案を提出するに及び、辞職願の提出に至ったが都民の信頼を基盤とする首長として失格ではある。

 ただ、都議会側も次々都知事選が東京五輪と重なることへの配慮が欠けていなかったか。舛添氏にリオデジャネイロ五輪後までの猶予を許さなかったのは納得し難い。参院選前の各党の点数稼ぎや揚げ足取りであり、週刊誌報道におもねた大衆迎合も批判されるべきだろう。

 前都知事の猪瀬直樹氏が現金受領問題で引責辞任したのに続く「政治とカネ」の問題での辞職である。国会でもしばしば取り上げられる古くて新しい問題だが、政治資金規正法が抜け道の多いザル法であることにも起因する。同法を厳しく改めるよう再検討することを求めたい。

 それと同時に、舛添氏個人の「恥ずべき問題」として片付けてしまうべきではない。舛添氏を支えた自民、公明両党の議員はもちろん、政治家や官僚など公職に就くすべての者が今回の件を教訓とし、公私混同を徹底して戒めることを自覚することも必要ではないか。

 東京都の次の課題は、停滞する都政を早期に刷新することだ。また、東京五輪開催への悪影響を最小限に抑えなければならない。そのためには、新知事の人選が極めて重要である。候補者の必要条件は清廉潔白な人材であることが第一である。

 猪瀬、舛添両氏の過ちを繰り返してはならないからだ。加えて東京五輪の「顔」にもなることから国際性が豊かで強いリーダーシップを発揮できることも求められよう。

 人選の失敗は許されぬ

 与野党は今後、参院選対策と同時並行して適格な候補者選びに集中しなければならないが、人選の失敗はもはや許されないことを肝に銘じるべきである。