日米印共同演習、対中抑止力の向上につなげよ


 海上自衛隊はきょうまで、沖縄県東方海域で米国、インド両国の海軍との共同演習「マラバール2016」に参加する。訓練を通して日米印3カ国の関係強化を図る。

 日米印の共同演習は3年連続5回目。昨年10月のインド洋に続き、日米印が海上安全保障協力を強化することで、東・南シナ海やインド洋などで強引な進出を行う中国を牽制(けんせい)する狙いがある。

 海自が定期的に参加

 マラバールという名称は、アラビア海に面したインド南部のゴア州からケララ州へと3州にまたがるマラバール海岸からきている。

 昨年10月には、米海軍から空母「セオドア・ルーズベルト」や原子力潜水艦、インド海軍からはフリゲート艦が参加。日本も海自の護衛艦「ふゆづき」と自衛隊員200人を派遣した。

 今回は海自から大型護衛艦「ひゅうが」が参加し、新型の国産哨戒機P1とインドとの間で輸出協議を進めている救難飛行艇US2が初投入された。対潜水艦や防空などの戦闘、捜索・救難を想定した連携を確かめる。米海軍の原子力空母、インド海軍のフリゲート艦のほか、航空機なども参加する大規模なものである。

 マラバールは1990年代に米印両海軍によって始まった。太平洋とインド洋でほぼ交互に開催されてきたが、日本が初参加したのは2007年。昨年12月に安倍晋三首相が訪印し、海自が定期的に参加することが決まった。

 米国防総省は先月公表した年次報告書で、中国の軍事・安全保障状況について、自国の利益を拡大するために武力紛争手前まで挑発を続ける「威圧的戦術」を使い、各国への圧力を高めていくと分析していた。これをそのまま見過ごすことは武力紛争につながり得る。

 日本周辺でもこうした動きが見られる。今月も中国海軍の情報収集艦1隻が鹿児島県・口永良部島西の領海に侵入したほか、沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域にもフリゲート艦1隻を送り込んだ。

 情報収集艦は、マラバールのために航行していた2隻のインド軍艦を追う形で領海に侵入したという。共同演習を監視していたもようだ。一連の動きには、中国が進める南シナ海の軍事拠点化に反発し、連携を強める日米を牽制する狙いもあったとみていい。

 領海内の航行は沿岸国の平和と安全を害しない限り、国際法上の「無害通航」が認められるが、中国軍艦艇はこれを口実に今後も日本領海への侵入を繰り返す可能性がある。

 中国はインド洋でも海洋進出を拡大し、軍艦や戦闘機などの戦力を急速に増強している。日本は、米国やインドと安全保障分野で緊密に協力しなければならない。

 韓国や豪州とも連携を

 同じ民主主義国家である韓国やオーストラリアとも連携を強める方向になればいい。

 米国や友好国と多国間の共同演習を積み重ねることで、戦術的技量を高めて参加各国との信頼関係を強化し、対中抑止力の確実な向上につなげるべきだ。