イチロー安打記録、心技体で打ち立てた金字塔
米大リーグ、マーリンズのイチロー選手がまた一つ、金字塔を打ち立てた。日米通算4257本目のヒットを放ち、ピート・ローズ氏の大リーグ最多安打記録を超えた。
日本での安打が含まれるため、大リーグの公式記録にはならない。しかし、ヒット4257本自体、気の遠くなるような数字である。日頃からの地道な鍛錬、精進の結果である。大リーグ通算3000本安打にも、あと21本と迫った。
日米通算4257安打
大リーグでのローズ氏の記録と、日米合わせてのイチロー選手の記録を同列に並べて比較できないという意見もある。メジャーの「安打王」と言われながら、野球賭博への関与で永久追放処分を受けているローズ氏は「日米の通算安打というなら、私がマイナーで打った427本も加えるべきだ」と言っている。
だが、米メディアや大リーガー、そしてファンはイチロー選手への讃辞を惜しまなかった。その記録の偉大さを米国のファンが認めていることは、総立ちのスタンドからの祝福と称賛の拍手に表れている。
日本のプロ野球で7年連続首位打者となり、大リーグでは前人未踏の10年連続200安打を達成。2度首位打者となり、2004年には262安打を放ってシーズン最多安打の大リーグ記録を更新した。
イチロー選手自身は「日米合わせた数字にケチがつくことは分かっているし、ここに目標を設定してやってきたわけではない」といつものようにクールに語る。
一方、「僕は子供の頃から人に笑われてきたことを常に達成してきているという自負がある。アメリカに行く時も首位打者になってみたいと言ったら、やっぱり笑われた。でもそれも2回達成した」「常に人に笑われてきた歴史、悔しい歴史が僕の中にあって、これからもそれをクリアしていきたい」と言う。
マリナーズからヤンキースに移籍した頃から、成績は全盛期ほどではなくなったが、野球へのモチベーションは下がらなかった。
現在42歳。頭には白い物が混じるが、体の動きのしなやかさ、切れは相変わらずだ。その卓越したバッティング技術を支えるのは、日頃の鍛錬、試合前の入念なストレッチ、そして打席に入る前の律儀とも見えるルーティン動作など。まさに心技体で打ち立てた数字と言える。
イチロー選手の活躍は、新しいアメリカン・ドリームを示したとも言えるのではないか。ピューリタンが建国した米国には、地道に努力することで報われ、大きな富や記録を打ち立てることを評価する素地がある。記録達成への米国人や米メディアの讃辞にそれが表れている。
そして何より、日本の子供たちに夢を与えてくれた。努力すれば大リーグ、あるいは世界を舞台に活躍できる。その手本となっている。
今後にも大きな期待
51歳の現役を目指すというイチロー選手。俊足、強肩もまだ衰えを知らないように見える。これからどのような高みへと上って行くのか。大きな期待を持って見守り続けていきたい。