続く追及で“詰んだ”か?文春が資質を問う舛添都知事の“見当違い”

◆複数の「情報提供者」

 舛添要一東京都知事の政治家としての品性と感覚が問われている。先々週の本欄で、海外出張時、スウィートルームを使うのは会議をするためであり、週末、都を離れ、公用車で別荘に行くことに問題はないと書いたが、週刊文春の追及はさらに続き、5月19日号では、実質的に家族旅行だった経費を「会議費用」で落とし、ブランド品のバッグを「事務所備品」として購入するなど、政治資金の流用私用が明らかにされているのを見ると、舛添氏には追及されるべきものがあると思わざるを得ない。

 同誌の“執念”とも見えるが、これらは数々の「情報提供」によってもたらされている。情報提供=タレこみには「提供する側の意図がある」と書いたが、複数の提供者から“あれもこれも”多くの情報がもたらされており、ここに至っては特定の個人が舛添氏を狙ってタレこんだだけでなく、多くの目から見ても、舛添氏の行動自体が問題と映っていたことがうかがわれる。

◆モラルと品性を問う

 舛添氏は参院議員時代に三つの政治団体を持っていた。文春はこれらの「収支報告書(一二年~一四年分)を徹底的に精査した」。そこで“発見”したのは千葉県木更津にあるホテルで「会議費用」として「約二十四万円」を払っている領収書だ。

 同誌取材班がホテルに聞くと、「会議は一切、開かれていません」とのこと。しかも「舛添さんはお子さんを連れて、慰安旅行でご利用されていました」という。これが事実なら、家族旅行代金を「会議費用」として政治資金から出したということだ。政治資金には当時舛添氏が代表を務めていた「新党改革」への「政党助成金が実質的に含まれている」(同誌)ことになる。

 高額な海外出張費や別荘通いに公用車使用などに対して「政治家のモラルや姿勢」が問われることはあっても、法や規定に違反しているわけではない。だが、収支報告書への虚偽記載となると話は違ってくる。法に触れてくるのだ。

 ただし、虚偽記載は「修正」ができるため、舛添氏が今後、会議費用や事務所備品として支出したものを私用と認め、報告書の記述を修正し代金を返還すれば法的追及はない。舛添氏が流用したとみられる総額は同誌がチェックしたものだけで、約410万円に上るが、同氏にとってはすぐに支払える額だろう。

 しかし、舛添氏が問われているのは政治資金規正法違反ではない。政治家としてのモラル、品性なのだ。同誌の追及も舛添氏の「資質」に焦点を合わせている。同誌は知事経験者の話を並べた。元鳥取県知事の片山善博氏は、「この人の感覚はズレているなと思いました」といい、元高知県知事の橋本大二郎氏も「見当違い」と切って捨てる。前東京都知事の猪瀬直樹氏も「意識が欠如している」と語っている。

◆逃げの態度で反感も

 同誌は「血税タカリ」だという。さらに豪快な経費の使いっぷりとは真逆の、自身の金については驚くほど「節約」していることを紹介している。知事に就任したばかりの時、職員に「ご馳走する」として連れて行ったのがハンバーガー店。しかも「クーポン券を自宅に忘れた」として、職員に取りに行かせたという。

 「このエピソードは、舛添氏の度量を測りかねていた都庁職員の間で、瞬く間に広まったという」と同誌は書く。週末別荘公用車の件が同誌にもたらされたのは「匿名の都職員」からだったことを考え合わせると、舛添氏は知事就任の早い時期から、「品性と感覚」「政治家としてのモラル」が疑問視されていた可能性もある。

 舛添氏は13日の記者会見で、「不徳の致すところ」と釈明したが、潔く虚偽記載を認めたわけではなく、「誰でもミスはある」と逃げを打った。しかし、こうした態度は逆に反感を買い、「それでは、これは?」とさらに新たな疑惑が文春から出される可能性もあり、次号が気になるところだ。

(岩崎 哲)