民進党結党に共産党との関係どうするか路線の明確化を迫った産経
◆各紙とも厳しい論調
衆院議員96人、参院議員60人の合わせて両院156人の勢力。民主党と維新の党による合流新党「民進党」が27日に都内で結党大会を開き、正式に旗揚げした。「国民とともに進む国民政党となる」「野党勢力を結集し、政権を担うことのできる新たな政党をつくる」などと結党宣言では、二大政党の一方の旗頭となる決意を掲げた。
だが、基本的な政治理念が一致したのではなく「反安倍自公政権」に依拠して辛うじてまとめた「寄せ集め政党」の印象は否めない。「民主、維新両党の単なる生き残り策の域を出ないような合流では、新党の前途は厳しい」(毎日・社説28日)と新党への期待値は、各種の世論調査でも分かる通りに相当に低い。
そのあたりは初代代表となった岡田克也氏も弁(わきま)えているようである。期待度が低い最大の要因は、平成21年9月から3年3カ月にわたって失政続きだった民主党政権への有権者の不信感が今なお根強く残るからだろう。岡田氏はあいさつで「われわれは政権与党として十分な期待に応えられなかった」と深い反省を述べたあと「政権交代可能な政治を実現するラストチャンスという認識を共有しなければならない」と訴えた。そして、夏の参院選や次期衆院選に進退を懸けて臨む決意を示したのである。
会場は熱気に包まれたが、民進党の結党についての各紙論調はかなり厳しい。何より「新たな旗のもとに集った議員の熱気と、国民の冷めた空気。まずは、この差を埋める努力から始めるしかない」と突き放した書き出しが、「反安倍」を鮮明にし民主党応援団然としてきた朝日(社説28日)にしてこれである。
◆政策の隔たり問題視
朝日は続けて、岡田代表ら役員のほとんどが民主党からの横滑りだとして「党名以外にどこが変わったのかとの批判もある」と指摘した。毎日もこの点については「各種世論調査で新党への期待感が低いのも『民主党の衣替えに過ぎないのではないか』とみられがちなためだろう」と言及。産経(主張・26日)はさらに手厳しく「名称以外に特段の目新しさがあるとは考えにくい。野党第一党として政権の受け皿となる気構えが、どこまであるかも疑わしい」とにべもないのである。
一方で、新党のスタートで肝心なことはその針路であり、政権を担える党として現実的で説得力ある政策を打ち出すことができるかどうかである。
針路で問題となるのは、選挙を控え協力を検討するという共産党との関係についてである。これに言及したのが読売(社説・28日)、小紙(社説・同)、産経の3紙で、読売は「そもそも共産党との間では、憲法や日米安保など政策面の隔たりが大きい。民進党内の保守系議員などには、『共産党にすり寄りすぎだ』との反発も高まっている。今のままでは、『野合批判』が一層強まろう」と警告した。
小紙は共産党が「破壊活動防止法に基づく調査対象団体だ」と指摘。民主党はその共産党と「選挙協力や安倍政権打倒、安保関連法廃止などで共闘を進めてきた」ことから、「共産党と一線を画していない」姿勢への疑問を提起した。その上で「票欲しさから共産党との共闘を続けるならば政権交代可能な政党とは言い難い」と強調したのである。
産経も「共産党を含む他の野党との共闘を探る姿勢は、反対を唱えるだけの無責任野党に堕する恐れが大きい」と結党にあたり、改めて路線問題の明確化を迫った。
◆朝日は巧妙にエール
朝日、毎日、日経にはこうした共産党との関わりについては触れていない。結局は民進党にエールを送る朝日は、安保法制などに見られるように、安倍首相は「憲法の枠組みを越えかねない危うい道を進む」と主張。「安倍氏の政権運営に危うさは感じるが、ほかに選択肢が見あたらない――。こんなもどかしさを抱く有権者は多い」として「民進党が、1強に対峙(たいじ)しうる存在になれるかどうか。それが、政治に緊張感を取り戻せるかどうかのカギを握る」と、巧妙な言い回しで「反安倍」勢力の民進党への結集を呼びかけるのである。
毎日は、国政選挙で「与党圧勝が続いた背景には、政権批判票の行き場がない状況がある」と分析。「穏健な保守・中道勢力も含めた幅広い支持を得る勢力に再生するためには、民主党の失敗で得られた教訓を十分学ぶ必要がある」というのだが、妥当な二大政党制の責任野党を期待しているのか、あるいは朝日のように「反安倍」勢力の結集を言っているのか、社説からはよく読み取れない。
(堀本和博)





