衆院選の違憲状態解消に不断の対策を


 自民、公明、民主3党は、現行の衆院小選挙区比例代表並立制の選挙制度を維持した上で定数削減を行うことで合意し、選挙制度改革について他の野党に幹事長・書記局長会談を呼び掛ける。最高裁が昨年12月の衆院選を「違憲状態」と判断したのを受け、「1票の格差」の是正を含めた改革が求められよう。

進まない選挙制度改革

 最高裁が昨年の衆院選も「違憲状態」と判断したことは重大だ。これは「違憲状態」とされた09年衆院選の区割りのまま昨年の衆院選が行われたことによる。最高裁が「0増5減」による格差是正に一定の評価をしたからといって国会は気を緩めてはならない。

 衆院選「違憲状態」の司法判断は、適切な措置を講じずに時間を浪費した国会が招いたものである。09年衆院選で政権を得た民主党は「1票の格差」是正に、当時の自民、公明など野党分断を目論む抜本的な選挙制度改革、さらに消費税増税に先駆けて「身を切る改革」として大幅な定数削減を併せて行おうとした。

 結局、与野党の主張が対立して議論が長引き、首相への区割り勧告も法的期限が過ぎてもなされない「違憲・違法」状態をもたらすという、立法府の機能不全を引き起こしてしまったのである。昨年衆院選は「1票の格差」が最大2・43倍になり、司法側は「国会の怠慢」を批判し、高裁レベルで「違憲」「選挙無効」という極めて厳しい判断が示された。

 今回の最高裁判決が「違憲状態」にとどまったのは、通常国会で6月に衆院小選挙区を「0増5減」する改正公職選挙法が成立したことを考慮したからだ。しかし、7月参院選前で自民・公明の与党が多数を得ていない参院は同法の採決を行わず、与党は憲法59条の「みなし否決」規定を適用し、衆院で賛成3分の2以上の再可決を行うという難産だった。

 民主党などが反対したのは「0増5減」では早晩2倍の格差を超えるという理由だった。しかし、野党側には反対によって最高裁が「選挙無効」の判断を示し、安倍政権に打撃を与えることへの期待もあった。与党側にとっては「0増5減」も最高裁による「違憲」判断回避の弥縫(びほう)策という側面も否めなかった。

 国会で司法判断が政争の具と化すことは嘆かわしいことである。国会は最高裁の判断を受け止め、党利党略に直結する選挙制度の問題であるからこそ、与野党協議を重ね、コンセンサスを得て、不断の対策を講じていかなければならない。

 定数削減は、昨年秋の臨時国会党首討論で当時の野田佳彦首相が「解散」の条件にした懸案だ。衆院比例代表に小選挙区の定数削減も加えて「違憲状態」を解消する「1票の格差」是正案を各党で考え、実現していくべきだ。

都市と地方の格差是正を

 また、各党は公約で都市と地方の格差是正を掲げている。人口が集中している都市と、超高齢化や過疎化の進む地方との不均衡を解消し、よりバランスのとれた国づくりを進めることも「1票の格差」是正に繋がるに違いない。

(11月26日付社説)