保守の側から国づくり 細野豪志・民主党政調会長に聞く

 民主党の細野豪志政調会長はこのほど本紙のインタビューに応じ、国家像、安全保障、「政治とカネ」、統一地方選、地域経済の活性化、東日本大震災後の原発問題などについて語った。
(聞き手=早川一郎編集局次長・政治部長、床井明男経済部長)

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細野豪志 1971年生まれ。京都大卒。2000年、衆議院議員初当選。原発事故の収束及び再発防止担当大臣、環境大臣、党幹事長などを歴任。静岡5区、当選6回。

 ――3月1日の民主党大会で来賓の一人が「党のホームページには細かい政策が書いてあるが、どういう国をつくりたいのかもっとクリアにしてもらいたい」との注文をつけていたが。

 2年前に綱領を改定する作業をやってそうとう議論をした。まずは共生社会を掲げている。ともすれば弱い人を助けるということだけに思われがちだが、必ずしもそうではない。安倍総理が就任直後の所信表明演説で、誰かによりかかる心を捨てることから始めるべきだと演説したが、民主党の場合はいい時は支える側、悪い時は支えられる側というものだ。その方が社会として強くなる。

 それと多様性。多様な生き方を認めていく。家族の在り方、個人の生き方、地域の在り方もそうだ。これからの国家のビジョンの一つとして、中央集権的な国をつくるか、分権型の多様性を重視した国をつくるかは大きな分かれ道だと思う。私は多様性のある国家の方がいいし、分権型でそれぞれの地域の住民が自分で政治や行政に積極的に参加できるような社会の方がいいと思う。

 ――民主党の場合、地域主権などと地域に「主権」を使うことが多いが。

 日本の長い歴史を考えると、日本の社会は土着的で地域発のいろいろな国づくりをしてきた。中央集権的に国家をはっきり定義して対外的にもやっていこうとしたのは明治以降だ。私は地域主権という言葉をわりと使うが、それを進歩主義的に使うのではない。多様性も共生も地方分権や地域主権もそうだが、保守の方からそういう考えを導き出していく。それが本来の国の在り方ではないか。民主党の中にはそういう考え方と少し違って進歩主義的な考え方で使う人がいるのも事実だ。しかしそうなると国を壊すことにつながりかねない。そういう懸念に対して応えねばならないのは国の安全保障だ。特に自衛に関してはきちっとやれる、という姿をわれわれは見せなければならない。

 ――安全保障の法整備に向けて政府・与党の動きが活発化してきている。政調会長としてはどう考え、発信していくのか。

 岡田代表のリーダーシップを支える政調会長としてフォロアーシップを求められると思う。ただ一方で、政策分野では私流のリーダーシップを発揮していかねばならない。安全保障はその重要なもののうちの一つだ。私流というのは、ボーンと大きなものを掲げそれに向かって強引にまとめるやり方はやめようかなと思っている。たぶんそれをやってもうまくいかないだろう。

 私がやりたいことは代表選挙ですでに語った。すなわち、尖閣諸島のような問題には対応できるようにしなければならないし、(朝鮮)半島有事に関してもこれまでのような考え方でいいのか、検証したほうがいい。その中に個別的自衛権に入らないものがあるとすれば自衛権としてしっかりやっていくべきだ、というのが私のベースの考え方である。ただそれを政調会長としてどんどん発信していくことがまとめていくうえでプラスになるとは限らない。今やっているのはアヒルの水かきだ。水面上では進んでいないようにみえるが水の下では一生懸命かいて全体としてゆっくりでもいいから前に進むようにしている。

統一地方選を党再生の契機に

「ふたば」高校スタートに希望も

 ――「政治とカネ」の件だが、与野党のトップの名前が出てきて問題になっている。この問題を今後どう再発させないかが重要である。

 まず、こういう問題が出てきたときにきちっと分けるべきは、制度をどう変えるかという議論とともに現実に出てきた問題が深刻であればこちらもきちんとやるということだ。補助金をもらっていたことについてすべて知り得るかどうかというと、なかなかそうはいかないということは理解できる。私は企業団体献金を一度ももらったことがないが、もらっている人からすればそういう理屈は成り立つだろう。しかし、裏金をもらっていたのではないかということなど質が違うケースもある。そこはしっかりと国会で追及していくのが野党の責任だ。

 一方の制度論は党内でしっかりと議論をしなければいけないと思うが、根本的な解決策は企業団体献金を禁止することだと思う。2011年の与党のとき議論をして一回、そういう結論を出した。ところが、東日本大震災が起き、その議論が立ち消えとなった。できるだけこれが実現するよう努力していきたい。

 ――企業団体献金の禁止を主張する維新との話し合いも今後あり得るのか。

 維新ともいろいろな話をしていくことになるだろう。

 ――いよいよ統一地方選挙だ。その結果は党の土台づくりにつながっていくし、来年の参院選にも連動していく。どう戦うか。

 民主党が土着政党として根っこを生やしてやれるかどうかの瀬戸際の選挙だと思う。地域の議員が現実的に活動している姿や自民党議員の後援会を見ていると、根差してやっているのは自民党の方だ。民主党がそこの勝負で戦えるようにならないと政権を再び取るのは難しい。私は、安倍政権の政治手法は土着型の手法の逆をいっている気がしている。例えば農業政策でも、まず全中(全国農業協同組合中央会)を解体するところからスタートして農業改革だと言われるが、農家の皆さんがどう豊かになるのかよく分からない。経済を良くするためにも金融緩和で円安にする、さらには法人税の減税をするというが、それが地方の経済にどう波及するか。むしろ逆の面がある。

 われわれはそれと違うアプローチをする。例えば農家の所得を増やしていくとか中小企業にプラスになるような負担軽減策を提示する。そういう中でわれわれこそが土着政党なんだという姿を見せられるかどうか、ここにかかっている。地方選挙で大負けして国政選挙で勝つというのはあり得ない。ここで最低限踏みとどまり、できれば一歩でも二歩でも前進をして党再生のきっかけにしたい。

 ――地域経済のため「土発経済」の活性化を訴えている。その具体的中身は。 大きく2種類ある。一つは中小企業対策。民主党の場合、格差問題に取り組むことにより経済の土台をしっかりとしたものにしていくと言い続けている。これはいい政策だと思うが、中小企業が利益を上げられるような環境をつくるという具体的な成長戦略が欠けているように思う。私が、これから前に出していきたいと思っている対策は、中小企業の社会保障負担の問題だ。だいたい年収400万円ぐらいの社員を一人雇うと、毎月、事業者側が支払う医療と年金社会保障負担が4万7000円。40歳以上になると介護が入る。雇用保険を入れると、年60万円以上かかる。これをパートや派遣社員など社会保障負担をしない形で雇えばゼロになる。だから、法人税減税を2000億円するという話があるが、これは地方にはほとんど効果がない。2000億円の財源を社会保障負担の軽減に充てた方が、雇用の波及力もある。中小企業のコストの減少にもつながる。この方が全国的にはいい。

 もう一つは分権型で経済政策をやるということが柱になる。例えば、特区や地方から要望が出て来た規制緩和を霞が関で決めるという今のやり方は、いずれも分権型ではない。霞が関(中央官僚)の力を温存している。特区はその典型で、おめこぼし規制緩和。そうではなくて、規制のあり方そのものをその地域に移譲した方がいい。例えば、静岡の場合なら、新東名ができたが、そのインターチェンジ(の周り)はほとんど土地利用規制で開発できない。都市においては容積率の規制で、国ががんじがらめにしてやっている。こういったものを開放するだけで随分違う。

 ――3・11から4年になった。原発や環境の問題では、まだまだやることがあるのではないか。

 最近、気になっているのは、福島の汚染水の問題だ。私が担当(原発事故の収束及び再発防止担当大臣を)していた時は、基本的に持っている情報は全部公開することを徹底したが、今は必要な情報は公開するというスタンスに変わっている。でも、必要かどうかという判断は、国民の側から判断しなければならない。そこで監視の目がきちっと届いているかどうかということがある。政府側の関わり方も緩くなり、事業者側の判断も変わってきているという印象はある。やはり、もう一回、原則を確認すべきだ。

 また、福島においては賠償の打ち切りの問題、さらに中間貯蔵の問題。これらは依然として原発事故のマイナス部分をどう少なくしていくかという議論が必要である。

 ただ、プラスの部分にも注目し応援したいのは、中高一貫校の「ふたば未来学園」という高校が、この4月、双葉郡広野町に新しくスタートできることがある。これは3・11の直後から、私も是非作りたいと思っていた。だんだん子供がいなくなるが、いい学校を作ればそこに子供が集まるのではないかと思った。これはある種のリスクもあった。県と一緒にやり出した。良かったと思うのは、120人の定員にそれを上回る152人が応募してきたことだ。そこには浜通りの子たちだけでなく、比較的距離のある福島市の方からも下宿して通学したり、県外に避難した子たちも来ることになる。勉強もするが、いろいろな文化やビジネス、スポーツも学べる特徴のある学校がオープンすることは明るい話題だ。

 原発事故を起こしたことには厳しい反省が必要だが、それに敢えて立ち向かっていこうという人たちやそこで生きて行こうという人たちをもっと応援したい。研究開発の施設、ロボテックの技術のラボ、再生可能エネルギーの施設などができている。そういう新しい動きにできるだけ光を当てて後押しをしていきたい。