西川農水相辞任、首相は任命猛省し緊張感を


 西川公也農林水産相が自らの献金問題で国会審議への影響を避けたいとして辞任した。安倍晋三首相が施政方針演説で「戦後以来の大改革」として農協改革を断行する決意を表明した直後だけに政権には打撃だろう。首相は任命したことを猛省し、国会での議論にもっと緊張感を持って臨まねばならない。

 国会審議の進展を優先

 西川氏が辞任した理由は、政治とカネの問題で「私がいくら説明しても、分からない人は分からない」というものだ。その問題とは、西川氏が代表を務める政治団体が農水省の補助金交付が決まっていた砂糖メーカー団体の関連企業から100万円の寄付を受けていたことや、親族企業に政治資金を支出していたこと、やはり補助金を支給されていた木材加工会社から300万円の献金のあったことなどが発覚したことだ。

 西川氏は返金を明らかにしていたが野党側は責任追及を強めていた。西川氏は「全部説明できたし、法律に触れることはない」と述べながらも、国会審議に影響が及び内閣に迷惑を掛けたくないとの理由で辞任に踏み切ったのである。

 第2次安倍政権でも小渕優子経済産業相(当時)と松島みどり法相(同)が責任をとって辞任したが、重要法案を抱えた中で国会審議の進展を優先させるのは当然のことだ。そのためにも、首相はまず国民に謝罪しなければならない。その上で、農協改革、環太平洋連携協定(TPP)などに関して合意形成を遅滞なく進めるべきである。

 首相は施政方針演説の中で、「改革断行」の筆頭に「強い農業を創るための改革。農家の所得を増やすための改革を進める」ことを表明した。農協法に基づく現行の中央会制度を廃止し、全国中央会を一般社団法人に移行することや、農業委員会制度の抜本改革などの政策は60年ぶりの「大改革」ではある。

 しかし、農業が日本の美しい故郷を守ってきた「国の基(もとい)」であるからこそ、本質的な農業活性化のための変化には慎重な議論が求められるのだ。

 TPPも最終局面に入っている。米側は今春にも米政府に通商権限を一任する大統領貿易促進権限(TPA)法が成立する見通しで、日米が歩み寄り全体的に大筋合意する可能性が大きくなっている。新たに任命された林芳正農水相との議論の深化が急がれる。

 林氏の政治信条は「小鮮を烹(に)るが如くす」だという。小魚をじっくり煮込んで形が崩れないようにしていく意味で、丁寧にコンセンサスづくりをしていくのが持論である。

 政策対決で存在感を

 それ故、野党側に求めたいのは、予算委員会の審議再開拒否などの強硬手段を避けることだ。「問題の幕引きは許さない」として真相解明を続行することは分かる。だからと言って、審議拒否に出て2015年度予算案の成立に影響を与えるようであってはならない。やじ合戦も控えるべきだ。

 後半国会には安保法制などに関する審議が待ち構えている。重要法案での政策対決で党の存在意義を発揮できるか。そこを国民は見ている。

(2月24日付社説)