硬軟両面の戦略で過激派の壊滅図れ


 米政府主催の「暴力的過激主義対策サミット」がワシントンで開催され、閣僚級会合には国連の潘基文事務総長ら70以上の国・機関の代表が参加した。

 国際社会は硬軟両面の戦略で過激派組織の脅威封じ込めを強化すべきだ。

 「宗教的な正当性なし」

 発表された共同声明は「暴力的過激主義やテロといった用語をいかなる宗教や国籍とも関連付けるべきではない」とした。また「テロ組織による募集や過激化の影響を受けやすい地域の住民に対し、経済、職業、教育の機会をつくる手段について検討する」と強調している。

 オバマ米大統領は「イスラム国」について「宗教的な正当性を与えてはならない。彼らは宗教指導者ではなく単なるテロリストだ」と明快に断じた。また、米国などの有志連合が展開している「イスラム国」掃討作戦について「イスラム教との戦争ではない」と述べた。

 「イスラム国」は「西洋社会とイスラム社会全体との間の文明の衝突から来た紛争」という構図を作り、支持を得ようとしている。特に、第1次大戦中の1916年に英仏露が締結した「サイクス・ピコ協定」を受けて誕生した主権国家の破壊をもくろんでいる。

 また、メディア部門に相当な人材を投入しているとの見方が有力だ。広報部門「アルハヤト・メディアセンター」は高い撮影・編集技術を持っており、動画を作成したり、インターネット上で英字機関誌「ダビク」を発行したりしている。

 戦果を誇示し、イスラム国への「移住」を呼び掛けるのが目的だ。共同声明では、ソーシャルメディアなど戦略的な広報を用いて過激派のメッセージに対抗していくことも打ち出した。

 テロの温床となっているのは貧困と教育の荒廃だ。若者たちが絶望からテロリスト集団に身を投じる。

 この点では、長期的視点が求められる。今回のサミットでは職業、教育の機会を貧困地域で拡大することが強調された。日本も過激派を生み出さない中東社会の構築支援を強化する必要がある。

 一方、今回のサミットに先立ち、オバマ大統領は「イスラム国」に対する武力行使を承認する決議案を議会に提示した。捜索救助部隊や特殊部隊の投入といった米軍による限定的地上戦の遂行を可能にする内容だ。

 有志連合による「イスラム国」への空爆は失地の一部回復に貢献したが、壊滅には不十分と指摘されていた。決議案は、戦闘を主任務としない小規模な部隊の活用は必要との判断に基づくものだ。

 しかし「イラクやアフガニスタンで行ったような長期にわたる大規模地上戦」(大統領)は認めないと明記するなど、現行の軍事戦略を大枠でなぞっている。野党・共和党は地上部隊の任務を限定し過ぎていると反発している。

 あらゆる可能性を探れ

 オバマ政権で国防長官を務めたゲーツ、パネッタ両氏は回顧録で、大統領に断固たる行動力がないことを批判している。「イスラム国」壊滅に向け、あらゆる可能性を探るべきだ。

(2月25日付社説)