党代表質問、定数削減には真摯に取り組め
通常国会は今年度補正予算についての麻生太郎財務相の財政演説に対する各党代表質問が行われ、昨年12月の衆院選後初の国会での論戦の幕を切った。
「イスラム国」によるとみられる邦人人質事件の発生で危機管理が喫緊の課題だが、政府の対応を見守る必要もある。一方、国会の責任で解決しなければならない定数削減問題には真摯に取り組むべきだ。
衆院選での批判繰り返す
人質事件について安倍晋三首相は「後藤健二さんの救出に向けて全力を尽くす」と述べるとともに「他に人質となっている日本人の情報には接していない」と答弁。湯川遥菜さんの殺害が伝えられる中、政府として後藤さんの早期解放に努めることを改めて強調した。
各国の人々を人質として拘束すること自体が言語道断であり、殺害が本当であれば残虐極まりない。各党代表質問を皮切りに国会は与野党論戦の場となるが、このようなテロ事件に関しては結束して国論を発していくことが必要だ。我が国としても再発防止、危機管理能力の向上に向けた議論を要するところだが、政府が人質解放に全力で取り組んでいる時に、各会派とも後押しを心掛けているのは当然のことだ。
補正予算案は地方活性化、消費喚起を柱とする3・1兆円規模のものだ。財政演説の「経済の好環境が生まれ始めている」「景気は緩やかな回復基調が続いている」という安倍政権の経済政策「アベノミクス」への楽観的な見通しの中で、脆弱(ぜいじゃく)と指摘した部分に財政出動する。
これに対し、民主党から質問に立った前原誠司元外相は、消費税率10%への引き上げを延期せざるを得なかったことを首相の経済失政と断じた。また、昨年の衆院解散・総選挙を「大義なき解散」と批判し、史上最低の投票率となった責任などを追及。補正予算案を「ばらまき」と切り捨てた。
が、衆院選の際の批判の繰り返しであり迫力不足は否めない。首相の答弁も「消費税について公約に掲げていない政策変更を決定したなら、国民に信を問うことが民主主義の王道」と述べ、衆院解散を表明した記者会見の言葉と同様のものとなった。民主党であれば、どのように10%への引き上げを予定通りに行っても無理のない経済環境を築いたのか、説得力ある論戦をする必要があろう。
一方、前原氏は定数削減・選挙制度改革に言及した。2012年11月に安倍首相が自民党総裁として野田佳彦前首相と党首討論をした時の約束であり、履行を迫ったことは道理のあることだ。
この時は、国民に消費税増税を求める以上、国会議員も身を切る改革が必要との認識から野田前首相が定数削減への協力を要請した。これを反古(ほご)にすれば、政治への信頼が少なからず揺らぐだろう。
選挙制度改革の実行を
自民党は衆院議長の下に設けられた第三者期間「選挙制度調査会」の答申の尊重、民主党は定数削減と1票の格差是正を公約している。
答申を得次第、選挙制度改革を実行に移すべきだ。
(1月28日付社説)