国会開幕、安保法制整備を着実に進めよ


 通常国会が召集された。安倍晋三首相は2014年度補正予算案と15年度予算案を早期に成立させ、経済政策「アベノミクス」の恩恵を中小企業や地方、低所得者層に広げていくことが求められる。

 集団的自衛権行使を可能にする安全保障法制の整備も着実に進めるべきだ。

 補正は地域活性化に重点

 過激組織「イスラム国」を名乗るグループによる邦人人質事件では、人質2人のうち湯川遥菜さんが殺害されたとみられている。許し難い蛮行だ。政府は決して屈することなく、テロの拡大防止に取り組む各国との連携を強めるとともに、もう一人の人質である後藤健二さんの早期解放のために全力を挙げなければならない。与野党議員も全面的に協力する必要がある。

 今国会ではまず、14年度補正予算案の審議が行われる。消費喚起や地域活性化に重点を置く経済対策を財政面で裏付けるもので、麻生太郎財務相は財政演説で「脆弱(ぜいじゃく)な部分に的を絞り、かつスピード感を持って対応を行うことで、経済の好循環を確かなものとする」と述べた。

 14年4月の消費税増税や円安による輸入物価上昇で実質所得は目減りし、個人消費の低迷を招いている。実質GDP(国内総生産)は14年4~6月期から2四半期連続でマイナス成長に陥った。

 民需主導の景気回復を実現し、17年4月の消費税再増税のための環境を整備するには、14年度補正予算案と15年度予算案の早期の成立と執行が欠かせない。地方創生にも結び付けていくことが大切だ。

 一方、安保法制整備について菅義偉官房長官は今年5月の大型連休明けに関連法案を提出するとの見通しを示した。自民、公明両党の与党協議での意見調整に十分な時間を確保するとともに、4月の統一地方選への影響を最小限にしたいとの思惑があろう。

 政府は昨年7月、集団的自衛権行使容認のための憲法解釈変更を閣議決定した。沖縄県・尖閣諸島の領有権を一方的に主張し、挑発的行動を繰り返す中国を念頭に、日米の防衛協力を拡大して抑止力を高める狙いがある。ただ中東ペルシャ湾での機雷掃海にも前向きな自民党に対し、「歯止め」を重視する公明党は慎重姿勢を崩していない。

 閣議決定では「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」で、国民の権利が「根底から覆される明白な危険がある場合」は自衛権を発動できるとしている。法整備によって自衛隊の活動を過度に制限することは避ける必要がある。

 昨年12月の衆院選で、自民、公明両党は憲法改正発議に必要な3分の2以上の議席を再び獲得した。安倍首相はテレビ番組の中で「21世紀の日本の理想の姿を込めた新しい憲法を自らの手で書いていくべきだ」と述べ、改憲に改めて意欲を示した。

 改憲への機運高めよ

 自民党はすでに「国防軍を保持する」と明記した草案を発表している。昨年6月には、改憲手続きを定めた改正国民投票法が施行された。憲法審査会での論議などを通じて機運を高めていきたい。

(1月27日付社説)